【浪江町の避難者の健康調査を開始します(いわき市)】
2012年10月15日
日本赤十字社は、福島県浪江町からの依頼を受け、2012年10月15日より「いわき市内に避難している浪江町民の健康調査」を開始します。浪江町の役場は二本松市に設置されましたが、多くの方々がいわき市内でも避難生活を送っているため、行政サービスが十分にいきわたらず、特に借上げ住宅にお住いの方々は住民同士が集う場も少なく、孤立しやすい状態となっています。避難生活を送る浪江町民に適切な保健衛生サービスや必要なケアが提供されるためには、健康状態の把握が急務であり、赤十字病院や日本赤十字看護大学の看護師・保健師が1年間の予定で聞き取り調査を行ないます。



【浪江町の避難者への健康調査を開始しました(福島県いわき市)】
2012年10月15日
日本赤十字社は、2012年10月15日より「いわき市内に避難している浪江町民の健康調査」を開始しました。約2,000名の住民を対象に個別訪問での聞き取り調査を行い、健康に関するニーズを整理し、調査結果を浪江町に提供します。同日には、開所式が行われ、第1班として北見赤十字病院から派遣された彌富祐樹看護師に血圧計や聴診器などが常備された携行バッグが手渡されました。本事業が、浪江町が将来的に町民の健康の維持・増進のためのシステムを構築させていくこと、また、避難されている方々の孤立化を防ぎ、コミュニティづくりの手助けになることを期待しています。

【いわき市内に避難している浪江町民の健康調査がスタート!】
期間:2012年10月15日~11月15日
北見赤十字病院:彌富祐樹看護師
浪江町民の健康調査が2012年10月15日より開始されました。この調査は、赤十字病院の看護師や日本赤十字看護大学の看護教員が、地域の世帯を戸別訪問し、健康状態の把握だけでなく、慣れない土地で暮らしている方々の健康相談、こころのケアと合わせ、聞き取りを行います。日本赤十字社の浦田喜久子看護部長は、「町民の皆様に寄り添い、いつもお声を聴きながら共に歩んで参りたいと思います。また、今回得られる知見を、今後の災害の備えにも活用し、皆様の苦しみが少しでも緩和できるように役立てたい」と、事業のあり方について話しています。第1班として派遣された彌富看護師は、「町民の皆様一人ひとりとの関わりを大切にし、看護師として体のことやこころのことなど合わせてケアをしていきたい」と語っています。

【不安な心に日赤看護師が寄り添う 浪江町民への健康調査】
期間:2012年10月15日~11月15日
北見赤十字病院:彌富祐樹看護師
日本赤十字看護大学の守田美奈子教授は「悩みとともに、望んでいる支援も具体的に話してくださるので事業の手ごたえはあります」と本事業の成果に期待を寄せます。その上で「把握したニーズからどういう支援につなげていくかを日赤と行政が連携して、活動できる部分を模索していかねば」と事業の先を見据えました。彌富看護師は、「『ずうっとよその家に泊まりにきている感じ』という避難されている方々の思いや、地元住民とのあつれきなどを聞いて、事態の深刻さを感じます。心のそばに寄り添う姿勢を心がけ、何を一番伝えたいのか聞き逃さないように気をつけています」と真剣な表情で浪江町民の話を受け止めていました。


【「健診は受けていますか」 避難中の浪江町民に健康調査】
期間:2012年11月15日~11月30日
秋田赤十字病院:高橋郁子看護師
石巻赤十字病院:三浦孝子看護師
運動不足や体重増加を気にする声には、散歩やウォーキングを勧め、「健診は受けていますか」などの質問を設けた健康増進のためのリーフレットを作製しました。町民同士の懇親の場「交流サロン」に参加した際には、健康相談と血圧測定を行い、レクリエーションにも加わりました。「町民の皆さんは、赤十字の訪問を快く受け入れてくれ、赤十字の信頼と期待が感じられた」と高橋看護師は振り返りました。三浦看護師は、「病院に戻って今回の経験を活かしたい」と語っていました。


【言葉にできない不安、ひしひしと~浪江健康調査に第6班派遣】
期間:2013年2月14日~3月14日
京都第二赤十字病院:森山真美看護師、藤井亜紀看護師
伊勢赤十字病院:鈴木美由起看護師
森山看護師は、「避難生活の長期化が予測されるため、不安や心配事を抱えながらも、どうにもならないと口をつぐんでいる町民と接し、『大丈夫です』という言葉の裏に、『話しても仕方がない』という気持ちを抱えている様子を感じ、支援への思いがさらに強くなった」と話してくれました。藤井看護師は、「まだ復興が進んでいないことをもっと全国的に取り上げてもらいたい」、鈴木看護師は、「今後も病院だけでなく地域と連携して復興支援に携わりたい」と話しています。


【帰還に向けて交錯する町民の思い~浪江町民健康調査】
期間:2013年3月13日~3月28日 期間:2013年3月27日~4月11日
庄原赤十字病院:廣田征子看護師 山口赤十字病院:河村和子看護師
広島赤十字原爆病院:日隈妙子看護師 松山赤十字病院:山内万裕美看護師
浪江町は2013年4月1日の避難区域再編に伴って立ち入り規制が一部緩和されましたが、暮らせるようになるまでには最低でも数年はかかると見込まれています。「浪江町に帰りたい。でも帰れない」「いわき市に永住したい気持ちもあるが、二重ローンに苦しむことになる」「避難解除されても、自宅はネズミのふんでぐちゃぐちゃで…」など、町民の皆さんは、町への帰還をめぐってさまざまな不安を抱えています。


【人と人とのつながりの大切さ~浪江町民健康調査第9班】
期間:2013年4月11日~4月25日
日本赤十字社長崎原爆病院:澤谷典子看護師
日本赤十字長崎原爆諫早病院:吉田光浩看護師
浪江町民は原発事故によってわが家と地域コミュニティを失いました。避難先のいわき市でも借り上げ住宅が分散しているために町民同士の交流は困難な状況にあり、それによる孤独感や精神的ダメージが体にも影響を与えています。町民の様子について澤谷看護師は、「人にはコミュニティが必要なのだと強く感じました」と言います。吉田看護師は、健康調査を行いながら、人の絆を作ることを心がけた活動の取り組みを振り返り、「決して浪江町だけの問題ではなく、もっと大きな問題として考える必要があると感じました」と語りました。


【継続した支援につなげるために~浪江町民健康調査】
期間:2013年7月11日~7月23日
水戸赤十字病院:橋本裕子看護師
高槻赤十字病院:原田かおる看護師
この活動は単なる健康調査ではなく、避難した町民の健康支援につなげていく役割も担っており、健康や生活状態を把握することだけでなく、ゆっくり丁寧に話を聞くことで心の健康も支援しています。訪問調査の中で看護師は、震災と原発事故により避難を余儀なくされ、さまざまな問題を抱えている町民の方たちと出会います。橋本看護師は、「赤十字である私たちが対面することで、町民の方たちは信頼して語ってくれました」と訪問活動の手応えを語りました。原田看護師は、「お話の中で、その方に必要なサポートが何か注意を払い、継続した支援につなげるため保健師と連携をとりました」と活動を振り返りました。


【地域とのつながりを強めた七夕祭り~浪江町民健康調査】
期間:2013年8月4日~8月17日
徳島赤十字病院:鈴江知子看護師
高山赤十字病院:中安規絵看護師
町民の中には、帰りたくても帰れないことに強いストレスを感じている方々もいます。生きがいを失って引きこもりがちになり、そのために運動不足になってしまうという傾向もあります。今回の活動期間中に七夕祭りが開催され、両看護師は浪江町民の有志による名物グルメ「浪江焼きそば」の屋台のお手伝いとして参加しました。こうしたお祭りなどの交流活動は、町民と地域とのつながりを強めるとともに、生きがいを失い引きこもりがちになった高齢者の方々にとっての癒しの場にもなっています。


【寒さを吹き飛ばす「ワンツーパンチ体操」~浪江町民健康調査】
期間:2013年11月25日~12月20日
さいたま赤十字病院:小野寺澄看護師
日本赤十字社医療センター:藤田容子看護師
12月12日には、「日赤なみえ保健室」で浪江町民を対象とした健康サロンが開催され、「三百六十五歩のマーチ」の歌に合わせて体を動かしてもらおうと考案された「ワンツーパンチ体操」などに取り組みました。藤田看護師は、「こうしたサロン活動での声かけが、町民の皆さんとの会話をいっそう深めるきっかけになるのでは」と語りました。また、小野寺看護師は、「参加者の一人からいわき市の方を連れてきていいかと聞かれ、今後は、参加対象を広げ浪江町民といわき市民との新しい関係が作れたらいいなと思った」と語りました。


【サロンで広がる笑顔と交流の輪!~浪江町民健康調査】
期間:2014年1月6日~1月31日
武蔵野赤十字病院:豊島麻美看護師
日赤なみえ保健室では、ほとんど外出をしていないという浪江町民が新たに交流を始めるきっかけになるようにとサロンを実施しています。今年は、「写経教室」から始まりました。「今年の抱負を一文字で」というお題が出され、参加者が思い思いの一文字を書きました。「ゆる体操」は、年配の方も体一つで安心して行える内容にしています。また、日赤なみえ保健室のスタッフが先生役となった「手芸教室」も行われました。これまでサロン活動は浪江町民を対象にしていましたが、今年から参加対象を「いわき市民」にも広げることに。浪江町民が知り合いのいわき市民を誘い、浪江町民以外の参加者も増えています。


【看護師が話を聞くことに大きな意味~浪江町民健康調査】
期間:2014年2月10日~3月7日
松江赤十字病院:津森有香看護師
津森看護師は、実際に生活状況を目にしながらアドバイスができる訪問調査に比べ、電話での調査は声や話し方から推測して判断する必要があり、難しい面もあったといいます。調査をする中で、町民の皆さんからはいろいろな話が出ます。時には周りにはあまり相談できない話をする方もいました。「私たちだからこそ話してくれる。避難している町民のお宅を私たち看護師が訪問したり、電話で悩みを伺ったりすることには、すごく大きな意味があり、健康調査に参加したことによって、中長期のこころのケアがとても重要であることをあらためて感じました」と振り返りました。


【二巡目を迎えました~浪江町民健康調査】
期間:2014年5月12日~6月6日
大分赤十字病院:西田尚平看護師
今回は2度目の調査となるお宅を対象にした活動を行いました。震災から3年が経過して浪江町民の方は少しずつ落ち着きを取り戻している様子がうかがえました。若い世代にはいわき市内で新たなコミュニティ関係をつくって生活している人が多いですが、高齢者の中にはなかなか環境に慣れることができず、一日中家に閉じこもっているという人も。そういう方にこそ、日赤なみえ保健室のサロン活動に参加してほしいところですが、「交通手段がない」という方も。西田看護師は、「近くに家族がいない人が徐々に孤立していくように感じられて、とても心配。家族の存在はとても大事です」と語りました。


【話を聞くことが「こころのケア」に~浪江町民健康調査】
期間:2014年8月18日~9月11日
成田赤十字病院:高柴律子看護師
高柴看護師は、家庭訪問や電話を通して話を聞いた後、住民から「愚痴を聞いてくれてありがとう」「たくさん話ができて気分転換になりました」などの言葉をかけてもらったことから、「日赤の活動が住民のこころのケアにつながっていると感じる」と語りました。また、一時帰宅で荒れ果てたわが家の姿を目の当たりにして、帰ることをあきらめる人もいるといいます。「普段は明るい表情をしていても、先の見えない状況を考えると眠れないことがあると多くの方が語っていました」と、住民の置かれた複雑な状況について振り返りました。

【落ち着き始めた生活と寂しさ~浪江町民健康調査】
期間:2014年8月18日~11月14日
前橋赤十字病院:大澤忠看護師
大阪赤十字病院:溝邉真由実看護師
今回、2回目の活動となる大澤看護師は、「前回は皆さんのやり場のない怒りが、ひしひしと感じられた。でも今回は、現在の生活を主にして大事にしていこうという思いが感じられる。新たな仕事に就いて働いている人も多く、生活は少しずつ落ち着いてきている人もいる」と語りました。溝邉看護師は、「いわき市での生活は落ち着いてきていますが、心の中にある寂しさを穴埋めするのはなかなか難しいこと。そのために誰かと話すことが、町民の皆さんにとってとても重要です」と語りました。


【資格を生かし感染症対策を指導~浪江町民健康調査】
期間:2014年11月17日~12月19日
釧路赤十字病院:松井由紀看護師
健康調査のために訪問したお宅で、糖尿病や高血圧など生活習慣病を患っている町民の大半は通院しており、健康面で特に気になるという方はいませんでした。この時期、いわき市ではかなり早い時期からインフルエンザの流行が始まっていたので、感染管理認定看護師の資格を持つ松井看護師は、「冬季に特に多いこうした感染症に対して、資格を活かした活動ができるのでは」と語りました。また、インフルエンザとノロウイルスについての感染予防について、パンフレットを作製して浪江町の住民に家庭訪問の時に配りながら注意を呼びかけたといいます。


【日々努力しながら前向きに歩む人びと~浪江町民健康調査】
期間:2015年1月5日~3月27日
前橋赤十字病院:慶野和則看護師
今回、2回目の活動となる慶野看護師は、前回に比べて時間の経過とともに町民の生活が落ち着いてきたように感じました。健康調査のために訪問した家庭でも、非常に落ち込んでいる様子の高齢者を見かけることは少なくなりました。ただ一見明るそうに見える方々でも、被災による心の傷が決して癒えたわけではありません。「今ここにある家族との生活をなくさないために、皆さんはさまざまなことを選択し、決断する日々を過ごしています。そして毎日努力しながら、少しずつ状況を良くしようとしているのだと思います」と語りました。


【前向きに生きていくことをお手伝い~浪江町民健康調査】
期間:2015年4月6日~4月24日
成田赤十字病院:服部信看護師
さいたま赤十字病院:西村一美看護師
健康調査は3巡目を迎え、電話をかけて「日赤なみえ保健室です」と名乗ると、皆さんにすぐに理解していただき、調査もスムーズに行うことができるようになりました。服部看護師は、「家庭訪問や電話でのやり取りで『問題ないよ』『元気ですよ』などの返事を聞くことも多くなり、新しい生活の基盤を作ることによって、町民の皆さんが困難を乗り越え、前向きに生きていこうとしていることがうかがえます」と語りました。西村看護師は「健康調査の際に、『浪江町民のことを日赤や国民は忘れてはいない』と伝えてきました。それが皆さんの前向きな気持ちや、がんばっていこうという気持ちにつながっていくことを願っています」と語りました。


【家庭訪問で前向きな気持ちを後押し~浪江町民健康調査】
期間:2015年5月11日~6月5日
大阪赤十字病院:直本宏看護係長
徳島赤十字病院:勝占智子看護師
町民は家庭訪問での対話の中で、震災当時からのことについて自分たちの経験やその時の気持ち、そしてどのような選択を経て現在に至ったかについて振り返ります。直本看護係長は、「皆さんが、話すことによって自分を客観視し、自己肯定することができてよかったと思います。私たちがお話を聞くことで、町民の前向きな気持ちを少しでも後押しすることができたのかもしれません」と語りました。勝占看護師は、ふるさとを離れて、広い庭や畑に囲まれたかつてのような三世代同居の大家族ではなく年配の夫婦二人だけの生活になるなど、生活環境や家庭関係の変化を強いられていることを知りました。震災は人びとの生活を大きく変え、復興にもまだ長い時間がかかると感じました」と語りました。


【家庭訪問で知る本当の思い~浪江町民健康調査】
期間:2015年6月8日~7月3日
秋田赤十字病院:佐藤由夏看護師長
仙台赤十字病院:土井陽子看護師
佐藤看護師長は「今回の調査活動によって、報道などでは伝えられていない、浪江町民の本当の思いを知ることができました。専門職である日赤の看護師・保健師が健康調査をすることで、町民の皆さんは胸にしまったそれぞれの思いを吐露することができます。それによってストレスを軽減し、精神的な苦痛から起きる身体的症状の悪化を抑えられるのではないかと思います」と語りました。「家を新築したけれども、ようやくここが自分の家だと思えるようになりました」とか、「津波で義母を亡くした男性は、助かった自分を長く責め続けていたが、震災から4年が経ちようやく自分を受け入れることができるようになった」など、「震災や原発事故によって生じた心の問題を解決するには、時間が必要であることをあらためて知りました」と土井看護師は強調しました。


【家庭訪問が心の整理の手助けに~浪江町民健康調査】
期間:2015年10月5日~10月30日
日本赤十字社長崎原爆諫早病院:池田千絵子看護師
清水赤十字病院:山田麻水看護師
活動は10月から4年目に入りました。池田看護師は、 訪問先で「『語り』や『思い』を聞かせていただくことで、その方の心の整理を手助けできると感じました」と話しています。山田看護師は、「震災から4年経っているので、皆さんが普通に、前向きに生活していると思っていました。でも、じっくりお話を伺うと、今でも悪い夢を見たり、自分を責めたりする方が多く、家族にも言えない気持ちを抱えていることが分かりました。看護師が支援に伺うことで、避難されている方は安心して自分の今の思いを率直に語ることができるのだと思います」と語りました。


【保健師による定期指導へ橋渡しを~浪江町民健康調査】
期間:2015年11月24日~12月25日
諏訪赤十字病院:山田春香看護師
山田看護師は、慢性疾患を長期治療中の女性宅を訪問した際、最近の検査データがあまり良好ではなく、それが副作用によるアレルギーが出て投薬を中止しているためだということを知りました。その女性から「食事療法と体操などの運動を行いたい」という希望が出されたため、浪江町の保健師と連絡を取り、適切な食事・運動療法の定期的な指導へとつなげることができました。「町民の方々のご家庭を訪問し、その様子を直接見て話をすることによって、慢性疾患がある方への適切な対処を示すことができました」と取り組みの成果を振り返りました。


【癒えない記憶と明日への希望~浪江町民健康調査】
期間:2016年1月4日~1月29日
長岡赤十字病院:高橋恵子看護師
高槻赤十字病院:梅本美紀看護師
高橋看護師は、ある女性から「津波を目の当たりにし、子どもの友人たちが津波に巻き込まれ、一人は行方不明に、もう一人は命を落としました。3月11日が近づくと心が落ち着かず、一人でいると不安です」という話を聞き「浪江町民の気持ちはいまだに平穏とはほど遠いことがよく分かりました」と語りました。梅本看護師は、震災後、娘さんとの同居について悩んだという女性の話を例にあげ、「浪江町民は震災によって、家族と同居するか、独居するかなど、状況に応じて難しい選択をせざるを得ない生活をしていることを、全国の皆さんに知ってほしい」と語りました。


【寄り添う気持ちによって生まれた笑顔~浪江町民健康調査】
期間:2016年1月25日~2月26日
福井赤十字病院:和田幸子看護師
「ある日訪ねた男性は当初は話しかけても応えてくれず、やんわりと拒む様子が見受けられました。それでも何回か話しかけるとやっと重い口を開き、通院で心身ともに疲れてつらいことや不眠が続いて苦しいこと、浪江町に帰りたいが帰れないかもしれないと思ってしまうことなどを、ぽつりぽつりと打ち明けてくれました」と語る和田看護師は、「初めは受け入れてもらえませんでしたが、お話に真剣に耳を傾けていくうちに心を開いていただき、いぶかしげな表情から明るい笑顔に変わりました。とてもよい出会いになりました」と振り返りました。


【震災から5年、胸の奥のさまざまな思い~浪江町民健康調査】
期間:2016年2月22日~3月25日
熊本赤十字病院:松本瑞美看護師
震災から5年後の今回、2回目の活動となる松本看護師は、浪江町に帰りたいが帰還困難区域だから帰れないなどの理由で、いわき市に家を購入し定住する方が増えている一方で、いつかは帰りたいという望みを捨てていない方もいたりと、町民はさまざまな思いを持っていることを知りました。
日赤の看護師が訪問すると「今日は震災のことや悩みを聞いてくれてありがとう。また来てください」と思いを打ち明けてくれます。「一人ひとりの思いに耳を傾けることの大切さと支援活動の継続の重要性を今回改めて感じました」と語りました。


【落ち着きを取り戻しつつある浪江町民~浪江町民健康調査】
期間:2016年6月6日~7月8日
清水赤十字病院:石川奈々恵看護師
調査も4巡目を迎え、「今後は浪江町に帰る予定がありますか」という質問に、大体の人がいわき市に家を構え、生活が落ち着いてきたという人が多いのが印象に残りました。浪江町は来年の3月に一部地域で避難指示が解除されるということですが、戻るのは難しいとお話しされる方が多い中、少数ですが骨を埋めるなら浪江だと帰還を希望する方もいらっしゃいました。なみえ保健室で開催しているママサロンでは、自分の出身地が浪江町だと知られると、子供が学校でいじめられるのではないかと悩む方が多くいることを知りました。また、高齢になると活力が無くなり、借り上げ住宅を出て新しく家を買う気力もなく、何かをする気力もないという方が多いことも分かりました。石川看護師は、「今回の活動を通して、介護予防に力を入れることの大切さを実感しました」と語りました。


【帰りたい思いと帰れない現状~浪江町民健康調査】
期間:2016年7月4日~8月5日
水戸赤十字病院:志賀久美子看護師
今回の健康調査は、4巡目ということで4巡目の方ばかりかと思っていましたが、今年いわき市に移動してきたという方も結構いらっしゃって驚きました。お話を伺うと、その方々の中には、4年間福島県を離れて他県で生活しながらも、最近になっていわき市転住された方もいらっしゃいました。若い方だと子供を通して地域との繋がりもできますが、おじいちゃん、おばあちゃんは、近所の方と話す機会も無く、散歩程度はするけど、後は家から出ないという方も多いです。今回は、1日に2件ずつの訪問をさせていただき、2時間くらいお話をする方もいるので、話を途中で止めず、最後まで傾聴するには、ちょうどいいのだと思いました。被災の辛い話だけでなく、趣味などの他愛のない話もゆっくりと時間をかけてお話させていただきました。「『今日は沢山お話ができて、こんな良い日はなかった』ととても喜んでくれて、嬉しかったです」と志賀看護師は語りました。


【第4期最後の訪問~浪江町民健康調査】
期間:2016年8月22日~9月16日
福井赤十字病院:高島恵看護係長
第4期最後の訪問でもあり、全体的には、「震災のことを言っても仕方がない、もう前向きに行くしかない」とおっしゃる方が多く落ち着いていましたが、新しい家を建てていても町内の人と交わらず、私達が訪問した途端に不満をぶつけてくる方もいました。また、夫婦間で浪江町への帰還についての意見が違っていて、その話になるといつも喧嘩になると言うご夫婦もいて、帰還に向けてはまだまだ解決しなければならない問題があるのだと感じました。「今後は、もうだいぶ落ち着いてきているので、まだ震災のことを悩んでいる方、お子さんが小さい方、独居の高齢者など、特に支援を必要とする人々を中心に訪問を続けても良いのではと思います」と高島看護係長は語ります。
「病院で勤務している時には時間的な制限もあり、1人1人の患者さんとじっくり話をするということは出来ませんでしたが、今回の経験をもとに、今後はできる限り病院でも1対1できちっと話を聞くということをやっていきたいと思いました」。


【第5期の訪問~浪江町民健康調査】
期間:2016年10月24日~11月25日
松山赤十字看護専門学校:松木優子専任教師
浪江町の方々は、生活の拠点を原子力発電所の事故による放射能汚染で奪われてしまいました。震災後5年以上経過し、最近では除染作業が進み帰還の目途がたちはじめましたが、帰還しても住む家をどうするかといった問題があるようです。帰還するということは、放射能の問題だけでなく、生活するための環境が整わなければ困難であり、住民の方々の苦悩がうかがえました。住み慣れた浪江町を離れ、新たに生活を始めるには、その土地の習慣に従った近所付き合いや、経済的基盤が必要です。浪江町に居たころと違う生活習慣に戸惑いながらも、浪江町の方々は日常をとり戻そうと各々が努力をされていましたが、お話を聞かせていただく中で涙する方もいて、震災後5年以上経過した現在も、精神的支援を必要とする方がいらっしゃる現実を知りました。復興に関わる人々と情報を共有することで、浪江町の方々の健康状態と現状生活再建状況をアセスメントし、1日も早く日常をとり戻し、健康で自立した生活を送れるように支援することが大切だと松木専任教師は語りました。


【帰還への道のり~浪江町民健康調査】
期間:2016年11月21日~12月22日
福井赤十字病院:福田清美看護係長
お話を伺った方の中に震災で別々に避難した家族のご夫婦が5年ぶりに一緒に暮らし始めたことを聞きました。5年の間にお互い生活スタイルができていたため、一緒に生活をしてみると意見が合わず口喧嘩になると話されていました。しかし、最後には「この生活に慣れていきたい」と前向きな言葉を聞くことができ、問題を解決するよう努力している姿をみることができました。震災から6年になる2017年3月11日には避難指示が解除され、地域への帰還が可能となります。しかし、震災前と同水準の行政サービスや生活様式が確立できるまでに時間が必要で、町民の帰還にも時間がかかります。また課題も多く、今後行政・町・町民が協働して復興に向けてかかわっていくことが大切だと感じました。原発をもっている福井県から来た福田看護係長は、故郷に帰れない気持ちを聞き原発について深く考えさせられました。訪問の度に「遠くから派遣されてきて大変ですね」とか「また話を聞きに来てください」と声をかけられました。この事業を長期間継続してきたからいただける言葉だと感じました。今回事業を通して感じたこと、浪江町やいわき市の現状を伝えていきたいと思います。


【健康調査支援事業最後の訪問~浪江町民健康調査】
期間:2017年1月10日~2月3日
高槻赤十字病院:吉田奈々子看護師
震災から長い時間が経つため、殆どの方が新しい地で生活する覚悟を持ち、新しい人間関係、新しい習慣を習得しながら安定した生活を送っているように見え、「落ち着いたといえば落ち着きました」と話される方が多くいました。しかし、その言葉の根底には、馴染みある地域に戻れないという、変えようがなく受け止めざるを得ない現実があり、気持ちをなんとか前向きに踏ん張って生きているということがひしひしと伝わってきました。本年3月末には避難指示が解除される予定の地域の対象となる方々は、「“帰りたい”という気持ちと“帰れる”のは違う。住むことが出来ても、安心・安定した生活は送れる状態ではない。みんなで帰らないと意味がない。」と言われていました。訪問や電話調査を通して、悲惨な経験を沢山の方が多く語って下さいました。傾聴することが本事業の役割だと思い返し、“聴いている”ということが少しでも伝わり、ほんの少しでも心が軽くなる方がいたら本事業の意味が深まると感じました。また、ママサロンでは、まだ手のかかるお子さんを抱えながら被災、避難したり、新しい地で出産、子育てをしたりと同じ試練を乗り越えたお母さん方が集まって、お子さんのことで悩んでいることなどを話し合ったりしています。「まだまだ本当の復興には長い年数がかかることは明らかで、風化しつつある問題を忘れないようにしていきたい、周囲に伝えていきたい」と、吉田看護師は語りました。
