浪江町民の健康調査支援事業の概要

2017/10/17

事業発足の背景と経緯


 2012年に、日赤看護部と看護大学は、厚生労働省科学研究による、「福島第一原発事故によりいわき市に避難した住民への保健サービスの円滑な提供を行うことに関する研究」を共同で行いました。研究の中で把握した住民の状況を深刻に受け止めた日赤看護部と看護大学は、その後、住民への支援のための活動のあり方について検討をしていました。
 その経過で浪江町から支援の要請がありました。浪江町は、いわき市において保健師の確保に苦慮していること、市内に仮設住宅がなく住民たちは各地に分散した借上げ住宅などに避難しているため町民同士の交流が困難であること、町に3つの避難区域が混在しているため早期帰還やコミュニティの再生が困難であるという問題を抱えていました。そこで、支援の要望がありかつ必要性も高かった浪江町を支援することになりました。
 上記の経緯を経て、浪江町と日赤、看護大学は共同で、いわき市内に避難している浪江町民を対象とした健康調査および支援活動を行うことになりました。2012年9月18日に浪江町との調印が行われ、当初は1年間(2012年10月~2013年9月)実施する予定でスタートしました。その後も引き続き支援が必要と判断されたので、2017年3月までの長期にわたる活動となりました。

※ 浪江町は、放射線量の高さによって、避難指示解除準備区域、居住制限区域、帰還困難区域の3つの区域に分けられている。

活動の目的と意義


 いわき市内に避難している浪江町民は、借り上げ住宅などに分散して生活しているため、さまざまな健康問題が生じる可能性があります。これを早期に把握し、健康被害を最小限に抑えるための保健医療サービスにつなげていくため、以下のことを目的として活動を行いました。

  • 町民の健康状態を把握し、保健医療サービスが必要と判断される場合は、浪江町の保健医療行政と連携しながら、住民の健康問題への支援につなげる。
  • 町民の健康状態と支援ニーズを把握する。
  • 聞き取りを行う際、町民の方々の生活や経験に耳を傾け、「語りを聴くケア」の実践を行う。
  • 健康調査結果の分析を行い、各種サロンを企画し運営する。
  • 支援ニーズに基づいた保健医療サービスやコミュニティ形成の在り方を検討する。

 また、本活動は、浪江町民の健康維持に寄与するということにとどまらず、以下のような意義があると考えています。

  • 早期の支援で健康状態の悪化を防ぎ、町民の健康問題の把握と早期の対応に寄与できる。
  • 町民の語りを聴くことで、不安やストレスの軽減につながると同時に、これからの生活を考えられるような心理的支援につながる。
  • 活動に参加した看護師・保健師が、災害中長期におけるケアを検討することができる。また、避難生活をしている被災者の支援ニーズを明らかにし、災害看護における教育、実践の一助とすることができる。
  • 赤十字としての災害発生後の中長期支援のあり方を検討するための情報を得ることができる。

主な活動内容


 本活動は、町民を訪問して語りを聴くケアの実践を行う「健康見守り調査活動」と、いわき市内に設置した「なみえ保健室」(2013年に「日赤事務所」から名称変更)においてサロンや相談室運営を行う「健康支援活動」からなります。
 健康見守り調査活動は、浪江町から依頼された町民を対象とした家庭訪問または電話による語りを聴く実践を通して行う健康調査です。浪江町や看護大学が作成した調査票に基づいて、町民の健康状態や継続支援が必要と思われる対象者の情報、支援ニーズなどを調査しました。調査では、被災者の「語りを聴く実践によるケア」を主にしており、質問を聞くことに集中することなく、語りを聴くことを重視しました。
 健康支援活動には、町民の皆さんに参加していただいて開催するサロン活動があります。当初は、他組織が主催するサロンにスタッフが参加して、血圧測定や健康相談を行いましたが、2013年からは「なみえ保健室」において日赤主催のサロン活動を企画し、「ママさんサロン」「写経」「手芸サロン」「健康体操」「ヨガサロン」などを運営しました。