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発災から8年 日赤福島県支部の復興支援の現状

2019/05/21

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、福島第一原発事故)の発生から、2019年3月で8年が経過しました。復興への明るいニュースもある一方で、福島県では、現在も4万人以上(平成30年12月時点)の方が県内外で避難生活を送っています。

日本赤十字社福島県支部(以下、福島県支部)は、被災県の支部として、海外の赤十字・赤新月社各社を通して寄せられた海外救援金を財源に、発災直後から復興支援事業を行ってきました。現在も福島県支部職員や赤十字奉仕団員などが様々な活動を継続しています。

本デジタルアーカイブでは、2016年3月、発災から5年経過した2015年度までの復興支援事業を企画展「日本赤十字社福島県支部 復興支援事業」として公開しております。
更に3年が経過した現在、福島県支部が行ってきた復興支援事業の変化を追いながら、「これらの活動がどのように変化して課題が浮かびあがったのか」、さらに「その課題にどう対応しているか」を復興支援事業の活動記録と共に紹介します。

これまでの福島県支部の復興支援活動について
福島県支部では、被災者・被災自治体へのニーズ調査を基に、「健康増進事業」、「生活再建事業」、「教育支援」を柱とし、「赤十字にこにこ健康教室」を始め、子どもからお年寄りまでを対象とした13の復興支援事業を、ボランティアなどの協力を得ながら実施してきました。2016年度と2017年度においても引き続き8つの事業が実施され、2016年度から新たに「青少年赤十字防災教育プログラム」が追加されました。

福島県支部復興支援事業の実施状況


2016年度および2017年度において引き続き実施された8つの事業と2016年度から新たに追加された「青少年赤十字防災教育プログラム」を紹介いたします。

健 康 増 進 事 業

身体とこころの健康づくりを応援する健康増進事業を実施しています。

» 赤十字にこにこ健康教室(2011年度~継続中)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
継続中

事業の概要
仮設住宅などで不自由な生活を送っている高齢者を対象に、生活不活発病の予防や孤立を和らげる教室を開催する。

» 赤十字救急法等講習会(2011年度~継続中)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
継続中

事業の概要
仮設住宅の集会所に設置されたAEDの使用方法や健康に関する講習を、救急法等指導員が行う。

» 赤十字健康講演(2011年度~2013年度)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
       

事業の概要
福島第一原発事故により避難し健康不安を感じている方に、専門家や医師による講演会を開催する。

» 避難地域住民交流会(2012年度~2016年度)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
   

事業の概要
避難生活で分散した地域住民のつながりを蘇らせる機会として、避難前の自治体ごとの住民の交流会を開催する。

» スポーツ・レクリエーション(2012年度~継続中)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
  継続中

事業の概要
被災者の運動不足防止やストレス解消のための野外活動を行う。
(ノルディックウォーキング、パーク・ゴルフ、スポーツ大会など)

生 活 再 建 事 業

被災された方の日常生活を取り戻し、コミュニティを再生するために必要な生活基盤づくりを支援しています。

» 地区・分区および赤十字奉仕団による復興支援活動(2011年度~継続中)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
継続中

事業の概要
地区・分区職員や奉仕団員が仮設住宅などを対象に支援活動を行い、被災者やコミュニティを支援する。また、地域での防災活動や福祉支援活動などを通じて奉仕団の充実・強化を図る。

» 復興イベントの開催(2012年度~2014年度)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
       

事業の概要
被災者の心身の健康の不安を軽減するため、ライブや映画上映などのイベントを行う。

教 育 支 援

次世代を担う子どもたちの将来の基盤づくりに貢献するため、震災により教育現場にて失われた物や場所、安心を提供する教育支援事業を実施しています。

» 赤十字すまいるぱーく(2011年度~2013年度)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
       

事業の概要
福島第一原発事故による放射線の影響に不安を感じて屋外活動ができない未就学児に、室内で思いっきり運動のできる場を提供する。

» 赤十字すまいるキャンプ(2014年度)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
           

事業の概要
福島第一原発事故による放射線の影響に対する不安からストレスを感じている児童・生徒に、自然体験や仲間とのふれあいを持つ場を提供する。

» 被災学校支援事業(2011年度~継続中)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
継続中

事業の概要
学校が被災したり福島第一原発事故の影響で避難したりで仮設校舎などに通う生徒・児童に、音楽や演劇などに触れる機会を提供する。

» 「青少年赤十字 詩・100文字提案」作品募集(2011年度~継続中)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
継続中

事業の概要
生徒・児童が、福島第一原発事故を体験して気づいたこと、考えたことなどを表現した、誌・100文字作品を募集し、作品集を作成する。

» 青少年赤十字 防災教育プログラム(2016年度~継続中)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
          継続中

事業の概要
世界でも類をみない複合災害を経験した福島県内の子どもを守るために、県教育委員会との連携のもと、「青少年赤十字防災教育プログラム」の学校現場への普及・活用のため、指導者の養成や防災教室開催の支援を行う。

» 被災した高校生の国際交流事業(2013年度~継続中)

2011
年度
2012
年度
2013
年度
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
    継続中

事業の概要
青少年赤十字加盟校、被災した学校の高校生を海外の赤十字加盟国へ派遣したり、赤十字加盟国の青少年赤十字メンバーを県内に招致して、相互に交流する場を提供する。

3年間の変化と日赤の取り組み


2011年3月の発災直後から緊急救援期が開始され、その後、5年程度の段階では、仮設住宅に避難している住民に対する支援が中心でした。しかし、その後、支援の方法を見直す必要性に迫られたと、福島県支部で復興支援事業を担当する高野統括参事は以下のように述べています。

「被災者の中には、時間の経過と共に仮設住宅から借り上げ住宅や復興公営住宅、あるいは新たに新居を求められる方も多くなっており、仮設住宅等を中心とした、いわゆるスポット支援から地域へ拡大したエリア支援の必要性が出てきました。また、原発事故を伴う本県では子育て世代で元の居住地から避難された方も多く、高齢者のみの世帯が県内各地で増加し、地域での高齢者支援が急務になってきました。さらに、地震、津波、原発事故という世界でも類を見ない複合災害を被った県民にとって、地域の防災力強化に向けた防災教育の普及は必要不可欠なものになっています。これらに加え、海外救援金による復興支援事業の終期が2020年度とされたことから、事業の終了を見据え、地域に根づいた支援活動にいかに継承していくかの視点も加味しながら見直しを図ったところです。」

このように、支援事業については、時間の経過とともに多角的、多面的、中長期的に捕らえる必要があり、2016年度から2017年度の活動は、従来からの支援事業を継続するとともに、高齢者の健康・安全に向けた①高齢者支援と、地域の防災力強化のための②防災教育の普及に力を入れています。

« 高齢者支援 »

高齢者の健康、安全、介護等の知識・技術を学ぶことができる「健康生活支援講習」を赤十字奉仕団、地区・分区事務局の協力を得ながら県内への普及を図っています。特に、県民の関心の高い認知症講習については、福島県の仲介により、受講者にオレンジリングを交付する「認知症サポーター養成講座」を赤十字講習会として開催できることとなり、開催実績も増加傾向にあります。

この「健康生活支援講習」の普及が支援員さらには指導員の増加につながり、将来的には避難指示解除後の被災地をはじめ県内多くの地域において地域包括ケアが進展することを期待しています。

健康生活支援講習の受講者数

(単位:人)

プログラム名 2016年度 2017年度
  短期講習(災害時高齢者支援) 608 479
  短期講習(その他) 458 1,359
  認知症サポーター養成講座 152 1,062
  支援員養成講習 146 153
  指導員養成 7*

* 指導員養成のみ養成者数

« 防災教育 »

2016年度より、福島県教育委員会が県内教員(主に小・中学校教員、約700人/年度、各学校から1名程度)を対象に行う防災教育研修の教材として、日赤本社が作成した青少年赤十字防災教育プログラム(まもるいのち ひろめるぼうさい)が採用されています(1コマ、60分間)。このような福島県との協力は、福島県と日赤の共同宣言の成果の一つです。
なお、防災教育については、青少年赤十字に限らず、「赤十字救急法等講習会」や「地区・分区及び赤十字奉仕団による復興支援活動」でも防災セミナーや防災教室を通じてハイゼックス等の炊き出し訓練、DIG(災害図上訓練)等のプログラムを広く地域の方々に提供しています。

各年度の開催実績を一覧表にまとめました。

2016年度青少年赤十字防災教育プログラム開催実績 [PDF]
2016年度は、福島県教育委員会主催の教員を対象とした防災教育の研修会に、日赤本社で行われた防災教育の研修を受講した方々等の指導による青少年赤十字防災教育プログラムが初めて導入されましたが、このプログラムの学校現場への更なる普及を図るため、教員OBを中心として組織されている賛助奉仕団員を対象とした「青少年赤十字防災教育指導者養成講習会」を開催し、防災教育を通じて学校現場をサポートできる人材養成に着手しました。

2017年度青少年赤十字防災教育プログラム開催実績 [PDF]
2017年度は、前年度に引き続き福島県教育委員会主催の研修会に青少年赤十字防災教育プログラムを提供しました。なお、県内7つの教育事務所ごとに開催されたこの研修会には、前年度の「青少年赤十字防災教育指導者養成講習会」を修了した賛助奉仕団員が指導サポート役として参加しています。

まとめ


2016年度および2017年度の支援事業の特徴は、企画展を公開した2016年の段階と比較しますと、以下の特徴がみられます。

  • 従来の被災者支援事業(企画展で紹介)を継続して実施していることに加え、広く福島県民を対象とした高齢者支援や防災教育にも力をいれるようになっています。
  • 復興への長い道のりを踏まえ、持続可能で地域に根づいた活動に継承していくことができるよう、高齢者支援や防災教育面では特に人材の育成に力をいれています。

日赤では、2017年12月、東日本大震災における救援活動の経験と教訓を踏まえ、将来発生が懸念される大規模災害に備えた「日本赤十字社復興支援事業基本方針」を定めました。この基本方針では「赤十字の総力を活かして、心身の苦痛を軽減し健康を維持する。災害からの学びを地域とその住民の災害対応能力の強化につなげていく」ことが理念として掲げられたところです。

今後は、この基本方針を踏まえ、赤十字奉仕団等のボランティアや地区・分区事務局など、赤十字の総力を結集するとともに、行政との連携、更には地域住民の自助・共助の意識醸成の下、地域に根づいた活動が継承していけるよう努めていきたいと考えています。

関連情報


日本赤十字社福島県支部 復興支援事業(2011年度~2015年度)
福島県内での復興支援事業(日本赤十字福島県支部)
東日本大震災における日本赤十字社福島県支部の復興支援事業 [PDF](日本赤十字社福島県支部)