被災した高校生の国際交流事業

福島県支部では、これまでも「国際理解・親善」を深めるための具体的事業として、県内の青少年赤十字(JRC)加盟校のメンバーを海外の赤十字加盟国へ派遣してきました。震災後は、県内のJRC加盟校の他に被災高校の生徒からも参加を募り、被害の実態を海外に伝えるとともに数多くの支援を受けたことへの感謝も伝えながら、現地の青少年との交流を図っています。

実施内容


【主    催】: 日本赤十字社福島県支部、青少年赤十字福島県指導者協議会
【後    援】: 福島県教育委員会、福島県高等学校長協会
【派遣国、地域】: フィリピン共和国 マニラ首都圏、近隣州
研修内容】:
 ① フィリピン赤十字社訪問・関連施設見学
 ② 青少年赤十字加盟学校訪問・青少年メンバー、地域住民との交流
 ③ 伝統文化・史跡視察・フィリピンの災害対応研修
 ④ フィリピン家庭訪問、青年ボランティアとの交流、関係団体訪問など

【2013年度】
・派遣期間  2013年8月11日(日)~ 18日(日) (7泊8日)
・派遣者数  JRCメンバー7名、引率教員2名、日赤福島県支部職員2名、被災校の生徒3名、被災校の教師1名、合計15名

東日本大震災の影響もあって、2010年以来の派遣となりました。参加した生徒たちは、「福島の今」を伝える一方で、自然災害の多いフィリピンで赤十字がどのような活動をしているかを学びました。フィリピンの原子力発電所(未稼働)や第ニ次世界大戦の史跡の見学、ソルトパヤタス訪問交流などを行いました。帰国後11月に行われた報告会では、参加した感想を発表し合うとともに、直前にフィリピンレイテ島を襲った台風の被災者に対する支援活動を、早速始めました。

2013年度 報告書 [PDF]
2013年のフィリピン訪問スケジュール、参加者の所感などをまとめています。

【2014年度】
・派遣期間 2014年8月10日(日)~ 16日(土) (6泊7日)
・派遣者数 JRCメンバー8名、引率教員2名、日赤福島県支部職員2名、合計12名

昨年に引き続きの派遣になりました。フィリピン赤十字本社では、昨年11月に襲った台風による災害についての説明を受けました。今年も台風が襲ったそうですが、昨年の経験を活かして被害を小さくできたそうです。昨年同様、原子力発電所や戦争の史跡などの見学に加え、貧困地区と呼ばれる地区の訪問を行いました。それに加え今年はゴミのリサイクル施設を訪問しました。貧困地区やゴミのリサイクル施設訪問に生徒たちは一番のカルチャーショックを受け、フィリピンの階級社会を実際に感じ、「格差社会」についての理解を深める一助となりました。

2014年度 報告書 [PDF]
2014年のフィリピン訪問スケジュール、参加者の所感などをまとめています。

【2015年度】
・派遣期間 2015年8月9日(日)~ 15日(土) (6泊7日)
・派遣者数 JRCメンバー7名、引率教員2名、日赤福島県支部職員2名、合計11名

フィリピン派遣では、生徒たちがいろいろなことを学べるように計画されています。フィリピン赤十字社を通じて様々な赤十字活動について学び、戦争史跡では平和について考える機会となり、そして日本国内でも取り上げられる、格差問題・エネルギー問題・環境問題についても考える機会になると考えています。将来の赤十字活動を担うことが期待されるJRCメンバーたちは後日行われた報告会で、様々なことに気づいたり驚いたりしたことを発表していました。

2015年度 報告書 [PDF]
2015年のフィリピン訪問スケジュール、参加者の所感などをまとめています。

日赤福島県支部担当職員のコメント


支部主催の「フィリピン派遣」事業は、2006年から2008年まで毎年高校生JRCメンバー8名、指導教師2名、支部職員2名 計12名で実施されました。3年継続した派遣事業の内容を検証し、2010年に再開されましたが、2011年の東日本大震災後の諸事情により、次回予定されていた2012年度の派遣は見送られました。高校のJRC顧問からは「フィリピン派遣」によるJRC活動の実績と効果を訴え復活を要望する声が多く上がりました。

■ 当時の状況
 東日本大震災では地震、津波の影響だけでなく福島県は東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射線性物質汚染の関係もありました。2011年度に福島県開催予定の「全国高等学校総合文化祭」は規模を縮小され、JRCも展示のみの発表になってしいました。
 県内各地の高校生メンバーの役員等の研修の場である福島県青少年赤十字リーダーシップ・トレーニング・センターも中止の検討もなされました。メンバーらは、こんな時だからこそ福島県JRCでできることがないか話し合いを持ち、首都圏で福島県の現状を伝えるとともに県産果物(梨)のPRができないかと提案し、実施しました。募金活動も行われ1時間の実施時間内で高額の浄財が集まりました。メンバーも指導者も震災後の活動を実感でき始めました。2011年度内の「フィリピン派遣」は当初の予定から無いことを関係者はわかっていましたが、予定の2012年度の中止が伝えられた頃より復活を望む声が活動のたびに上がってきました。

 ※リーダーシップ・トレーニング・センターとは青少年赤十字のリーダーになることが目的の研修です。
  赤十字や青少年赤十字について学び、リーダーとして必要な知識や技術、経験を養います。

■ なぜこの事業を始めたのか
・震災以前
 青少年赤十字活動の実践目標である、「国際理解・親善」活動の一環として世界に目を向け海外のJRCメンバーとの交流を通じて、国際性豊かな青少年の育成をはかるために始められました。日赤本社が招聘した海外JRCメンバーを支部で受け入れおり、海外派遣の雰囲気が熟成されてきたこともあります。また赤十字活動の意義を考え、今後の活動に生かせ、本社が重点支援地域とした他支部と競合の少ないフィリピン共和国に派遣を実施することとなりました。        
・震災後
 震災以前の目的に加え災害多発国に住むメンバー同士の交流、未来のために過去の戦争の歴史にも目を向ける内容により派遣を再開しました。
 震災後に、かねてより交流の有ったフィリピンJRCのメンバーから電話で安否の確認がありました。また、フィリピン赤十字社本社から福島県支部にTシャツの寄贈もありました。再開するに当たり、東日本大震災に対する支援への御礼と福島の現状を報告したいという声がメンバーから出ました。

■ 実施後
 県、各地区での総会等でフィリピン派遣の報告を行ました。現地での思いをJRCの態度目標である「気づき」、「考え」、「実行する」で今後の活動にも活かしてゆきたいと訴えていました。学校での活動にも生かされ顧問教師からだけでなく担任等からも良い変容が伝わってきました。2014年の台風30号(ヨランダ台風)がフィリピンを襲い甚大な被害が出たことを知った派遣メンバーが主となり福島駅で12月24日、25日募金活動を実施しました。「東日本大震災で支援をしてくれたフィリピンに今度は私たちで支援をしていきましょう」と呼びかけました。また2015年5月のネパール大地震の際も福島駅で郡山やいわきの派遣メンバーも駆けつけ街頭募金を行い浄財を県支部まで届けてくれました。

派遣メンバーたちは、福島県JRCのリーダーとしてフィリピン派遣に参加していることは勿論ですが、「フィリピン派遣」での学びを他のメンバーに伝達するだけにとどまらず、自らの進路についてJRCの指導者になりたいことを表明する場合もあり、派遣が大きなきっかけになっています。この事業への参加を通じて、赤十字活動の理解者、実践者にもなって行くと感じます。