1.  >
  2. 第3回原子力災害関係国赤十字社会議>
  3. 開会挨拶(日本赤十字社 近衞忠煇 社長)
開会挨拶

開会挨拶(日本赤十字社 近衞忠煇 社長)

会議の開催にあたり、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)会長でもある日本赤十字社 近衞忠煇社長と、IFRCのシィ事務総長から開会挨拶がありました。近衞社長からは、今回の会議に16か国からの参加があったことを嬉しく思うとともに、有意義な議論がなされ、総会決議をより具体的な形で前へ進めることができるよう強く希望するとの挨拶がありました。

  1. |
  2. 社長挨拶 |
  3. 事務総長挨拶|

議長、ご来賓の皆様、そして赤十字・赤新月社の皆さん、2011年国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)総会で採択された決議のフォローアップとして原子力災害への備えについて話し合うために、本日ここ福島に皆様をお迎えできたことをとても嬉しく思っております。新たに10の赤十字・赤新月社がこの会議に加わり、参加社が16社になりましたことは私にとってたいへん喜ばしく、励みであります。呼びかけに応えて下さったすべての赤十字・赤新月社にお礼を申し上げると同時に、同じ懸念を共有するこのネットワークが今後も広がることを強く希望します。
 
皆様も記憶していらっしゃる通り、2011年3月11日、巨大地震とその後の津波が日本の東北地方沿岸を襲い、多くの犠牲者と甚大な被害をもたらしました。その後、ここ福島市からわずか60km、そして東京からは200kmの福島第一原子力発電所において重大な事故が発生し、近辺の多くのコミュニティが混乱の中、避難しなければなりませんでした。
 
参加者の皆さん、そして皆さんの国・地域の方々と赤十字・赤新月社は、日本赤十字社による被災者の方々の苦しみを和らげるための取り組みを支えて下さいました。この機会に、私はそのご支援に心から感謝申し上げます。
 
あれから3年半が過ぎ、事故のあった原子炉はほぼ落ち着き、大きな事故が再び起こる可能性は最小限となっています。しかし、広範囲にわたる放射能汚染地域は未だ除染されておらず、住民の皆さんは安全・安心な帰還ができないままです。その他にも汚染された土壌、植物などの廃棄や事故のあった原子炉の廃炉には数十年かかると予想されています。事故直後より、日本赤十字社は避難された方々の救護に5ヶ月間従事し、その後も今日に至るまで健康診断や心のケアを提供してきました。これらの活動は現状が続く限り、続けなければなりません。
 
あの事故の直前まで、日本国民の大半は原発が安全であると信じていました。発電所の近隣住民の方々を含め、このような重大な事故が発生する可能性や発生した場合の広範囲に及ぶ生活への影響、対処のしかたについて十分な情報は提供されていませんでした。放射線が健康、食品、飲料水、環境に及ぼす影響についての情報は限られており、しばしば錯綜していました。そのような情報とともに、非科学的でセンセーショナルなメッセージが広く被災地や国内のみならず、国外へも流れました。日本赤十字社では原爆関連の疾患を専門に治療する病院を広島と長崎に2つ持っていますが、その病院でさえもこのような想定外の原子力災害に対応するための専門知識や備えは実際にはありませんでした。そのため、私たちは日本赤十字社の医療・救護スタッフのための活動マニュアルを急遽作成し、彼らを放射線被災地に派遣する前にオリエンテーションを行いました。
 
日本には54基の原発がありますが、福島での事故後、その安全性が厳しく調査され、近隣住民の方々と原発立地自治体が安全性に納得するまで運転が停止されています。世界に目を転じますと、30ヶ国に約430基の原発があり、その数は急速に増えています。残念ながら、これらの国においても日本同様、私の知る限り、原子力災害対策は多くの場合隠されており、情報は共有されていません。
 
大規模自然災害の発生頻度が増え、もたらされる影響も大きくなってきています。また、原発がテロ攻撃を受けるリスクも広がりつつあります。このような昨今の傾向を考えますと、原発の安全神話は何れの地においても、もはやあてはまらないことは極めて明白です。従って、私たち赤十字・赤新月社は、起こりうる事態による影響への対応のみならず、原子力災害がもたらす深刻な影響を憂慮し、個々に、あるいは他のあらゆる当事者と共に原子力災害に備えるために何ができるのかを現実的に考える義務があります。
 
私は、原子力の平和的な利用の賛否に関する政治的議論に踏み込むつもりは全くありませんが、原発が引き起こすかもしれない被害について人々を正しく啓蒙し、「放射線によるリスクを正しく怖がる」心構えを広めるために、私たちはベストな立場にいると私は確信しています。事故は起こらないかもしれませんが、私たちのメッセージは、「原子力に依存する限り、私たちは事故に備える必要がある」というたいへんシンプルなものです。それぞれの状況に応じてできることを決めるのは、各赤十字・赤新月社に任されています。各赤十字・赤新月社の今後の役割がどのようなものであれ、私たちにはチェルノブイリと福島の悲劇から得た経験があります。その経験にもとづき、私たちは率先して国内外で行動しなければなりません。様々な国にある既存の事前対策に関する情報を収集・共有し、それを全ての原発保有国で適用できるような共通の標準ガイドラインに発展させなくてはならないのです。
 
今回の関係国会議において有意義な議論がなされ、総会決議をより具体的な形で前へ進めることができるよう強く希望し、私の開会の挨拶とさせていただきます。