セッションサマリ

セッションサマリ

会議3日目・4日目に行われたセッションでは、原子力災害対策に関して、参加者で議論しました。各国の活動内容や、2015年の公式会議に向けた取り組みなどについて話し合われました。その各セッションの概要を掲載しています。

セッション概要:会議3日目


sessions

第3回原子力災害対策関係国赤十字社会議(以下「関係国会議」)での議論の中心は、原子力緊急事態への備え・対応のための「連盟ガイドライン」*1草案でした。そのため、この議題には丸1日を費やし、草案全体、草案のコンセプト、考え、そして取り組んできた中で浮かび上がってきた課題についての説明が行われました。分科会でのセッションでは、事前の備え、応急対応、復旧・復興など具体的な段階について検討しました。
 
そして最後のセッションでは、原子力・放射線緊急事態に備えるための整備を行った、または現在整備を進めている赤十字社から、具体例を発表してもらいました。
 
「連盟ガイドライン」草案の概要および構成については、アメリカ赤十字社の代表が説明しました。

連盟ガイドライン草案の概要

ディスカッションでは「連盟ガイドライン」草案について、「問題を網羅している」、「赤十字運動に一定の枠組みをもたせるという目的が達成された」等、全体的に前向きなフィードバックがありました。

また、この草案はこれまでに、国際赤十字・赤新月社連盟(以下「連盟」)の関係国メンバー・緊急事態支援グループ・各ゾーン事務所の災害管理コーディネーターなどの各部門、赤十字国際委員会(ICRC)の関係部門、外部機関など具体的な関係者と広く共有してきました。いくつか建設的なコメントをすでにいただいていますので、今後の草案見直しの際に、これらコメントも含めて検討する予定です。

具体例の発表
このセッションでは、(CB)RN*2分野での備え・対応に関する活動の現状について、いくつかの赤十字社から説明を行いました。

日本赤十字社
日本赤十字社からは、2011年3月に発生した東日本大震災以降行っている活動について詳しい説明がありました。日本赤十字社では、日本において今後、より確実に原子力緊急事態に備えるためにいくつかの措置をすでに取っています。関係当局と原子力緊急事態で担う可能性のある役割を明らかにした後、独自の活動ガイドラインを現在作成しています。また、具体的な装備を調達し、各赤十字病院および支部に配置しました。
また、国会図書館と緊密に連携しながら、原子力災害への備え・対応に関する情報を収集、加工し、インターネット上で発信するデジタル・アーカイブを立ち上げました。

オーストリア赤十字社
災害救助やトレーニングに加え、救助や救急搬送サービス、献血者の募集と献血、健康・コミュニティ活動などオーストリア赤十字社の活動全般について概要説明がありました。CBRN分野において、オーストリア赤十字社は国家放射線防護ワーキング・グループのメンバーであり、各支部も放射線・核物質関連事故に備えた地域計画に含まれています。

イタリア赤十字社
イタリア赤十字社には独自のガイドラインがあり、様々な形での関与が記載されています。スタッフやボランティアが受けられるトレーニングや、緊急事態に対応する際にスタッフ、ボランティアを守るための具体的なルールも記載されています。ガイドラインの別紙には具体的な運用時のテンプレートや技術的装備についても書かれています。CBRN緊急事態にスタッフとボランティアを派遣するかどうかは、イタリア赤十字社社長の裁量に任されています。
イタリア赤十字社は、特殊な活動としてローマにあるガンマ線分析中央研究所を運営しています。自然放射線と人工放射線のモニタリングを行うためにイタリアとヨーロッパにはネットワークがありますが、この研究所はその一員です。

ICRC
ICRCからは、Weapons Contamination UnitのCBRNハザード・プログラム活動の現状が報告されました。このプログラムの目的は、スタッフやボランティアの保護、事業継続性の確保、被災者への可能な支援の提供といった点において、連盟が策定中の「連盟ガイドライン」とも合致しています。
ICRCは国際赤十字内外の専門知識を活用しながら、対応能力構築のための活動に取り組んでいます。

チェルノブイリ人道支援・復興プログラム (CHARP)
連盟のヨーロッパゾーン事務所のスタッフが、23年間にわたるCHARPの活動および経験について発表しました。計画されているCHARP運営に関するレビューについても詳しく説明してくれました。

1989年のソ連赤十字社の要請により、連盟は内外の専門家からなるチームを編成し、1990年初めにこのミッション(派遣団)による調査結果をまとめました。ロシア、ベラルーシおよびウクライナへのミッションの知見は以下の分野に関するものでした:放射線と生態系、社会経済、情報、心理、医学およびデータ収集。

この報告にもとづき、被災地域の赤十字社および被災者を支援するための最初のプログラムが策定されました。1990年の評価結果には、福島第一原発事故後に行われた2011年の評価の結果に極めて似た内容もありました。

当初の活動目的は、環境中および被災者の放射能測定を行うためのMobile Diagnostic Laboratories*3(MDL)の整備、安全な食品の提供、放射能に関する情報収集と情報提供でした。これらの活動は1996年に評価を行った後、若干変更され、被災者のための活動の中でもこころのケアに、より重点が置かれました。

プログラムを最初の数年間運営し、評価ミッションが数多く行われた後、CHARPによる活動の一部は緊急時の活動から復興計画に重点を置く長期的なものへと変更されました。今回の発表では、この点が強調されました。 

*1 連盟が策定を予定している被災者支援に必要な赤十字としての行動指針(世界189の赤十字・赤新月社の行動指針)。
*2 CBRN = chemical, biological, radiological and nuclear (化学、生物、放射線および核)。
*3 移動診療所

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セッション概要:会議4日目


Italian Red Cross

国際原子力機関(IAEA)および国際放射線防護委員会(ICRP)による発表後、参加者達は国際赤十字内外のリソースについて振り返り、現在進行中および将来の活動、そして今後の取り組みについて議論を行いました。

2014年は、具体的な目標とマイルストーンを達成できました。2014年1月にジュネーブで開催された関係国会議をうけて、「連盟ガイドライン」の草案作成に重点が置かれました。

原子力緊急事態への備えに関する戦略的アクションプランは、赤十字内外の関係機関と緊密に連携を取りながら全面的に実施しています。

さらに、外部機関との連携が正式に確立されました。例えば、連盟はInter-Agency Committee on Radiological and Nuclear Emergencies*4 (IACRNE)のオブザーバーとなり、OECD Nuclear Energy Agency*5 (NEA)のWorking Party on Nuclear Emergency Matters*6 (WPNEM)にも緊密に協力するために招かれました。2014年5月、連盟はICRCとともに世界保健機関(WHO)のRadiation Emergency Medical Preparedness and Assistance Network*7 (REMPAN) の会議に出席し、原子力緊急事態への備えに関する分野での赤十字の活動を発表しました。

ツールの作成
各赤十字・赤新月社および連盟の対応能力を強化するため、原子力緊急事態により確実に備えるため、そして既存の活動を強化するために、様々なツールの作成が開始されました。
中心的な作業である「連盟ガイドライン」作成のほかに、トレーニングの可能性についても議論されました。

イタリア赤十字社は放射線・原子力緊急事態への備えについての基本知識を網羅するようなサマースクールの設立を提案しました。
ジュネーブにある連盟の緊急時保健チームとともに、放射線防護の基礎知識に関するE-ラーニング・コースも開発中です。
デンマークのコペンハーゲンにある連盟のこころのケア・レファレンスセンターは、東日本大震災後の経験にもとづく対応を行っています。このセンターで作成しているツールの一部は、東日本大震災の教訓を取り入れています。また、このセンターは、CBRN関連の事故後に行うこころのケアの具体的なツールを開発する共同事業体に参加しています。

専門家集団
共同専門家集団のコンセプトの説明と、短い議論が行われました。この活動の目的は、緊急事態の種類に応じて展開可能なCBRNの国際的な専門家集団を立ち上げることです。この専門家集団を立ち上げる場合は、既存の赤十字・赤新月社の対応能力に沿って構成されるべきでしょう。

専門家集団は、緊急事態の種類別タスクや長期にわたる任務に応じた手順、トレーニングおよび装備が、既存のものと整合性がとれるよう取り組んでくれることでしょう。

既存の緊急対応体制を連携させるため、地域に焦点をあてることが考えられます。各赤十字・赤新月社がテーマ毎に中心となって行動することも想定されます。そのために、例えば、原子力緊急事態が発生した場合に他の赤十字・赤新月社を支援するため、ある分野の専門知識や関連する装備を備えておくことも考えられます。

会議参加者はアドバイザーに求められる可能性のある具体的な条件についても議論しました。緊急対応ユニットを全面的に整備するよりも、アドバイザー機能を整備しておく方が容易かもしれません。さらに、赤十字・赤新月社によってはその国の基準に則って専門ユニットも立ち上げられるかもしれません。その際の基準は、他の国の規制・要件とは異なるかもしれません。

今後の取り組み
今後数か月にわたり、以下の点について取り組みます:

  • CBRN災害分野での各赤十字・赤新月社の備え・対応能力のマッピングを行う(各ゾーン事務所と緊密に連携しながら行う)
  • (可能であれば)CHARP運営レビューへのサポートを行う
  • 原子力・放射線緊急事態への備えについて啓発活動を行うため、また、連携の可能性を探るため、既存の他のワーキング・グループと連携する
  • 関連会議や地域会議において、各赤十字・赤新月社に原子力事故への備えに関するプログラムへの参加を促す
  • FedNet*8の関連ページを充実させ、原子力緊急事態に関する基礎知識を詳しく説明し、関連資料も入れる
  • 災害への備えに関する連盟リソース・センターと協力しながら、原子力緊急事態への備えについてのTopicsページを作成する

原子力緊急事態への備えは、提案済み議題との関連により、2015年12月にジュネーブで行われる第32回赤十字国際会議に提出することとします。今回の関係国会議で参加者からは、赤十字国際会議は参加政府に各赤十字・赤新月社の原子力緊急事態への対応能力を示す良い機会であり、この好機をとらえるために準備すべきとの意見が出されました。

*4 放射能・原子力緊急事態機関間委員会
*5 経済協力開発機構原子力機関
*6 原子力緊急事態作業部会
*7 緊急被ばく医療ネットワーク
*8 連盟の各赤十字・赤新月社向け専用サイト。