東日本大震災復興支援国赤十字・赤新月社会議2018開催について

2018/04/24

東日本大震災発生から7年


山澤東日本大震災復興支援推進本部長の
プレゼンテーション

山澤東日本大震災復興支援推進本部長のプレゼンテーション

 2万人を超える死者、行方不明者を出した東日本大震災から7年が経ちました。日本赤十字社(以下、日赤)はこの間、海外からお寄せいただいた約1,002億円の海外救援金を活用して被災者を支援してきました。このような多額の海外救援金を受けたのは、関東大震災(1923年)以来のことで、日赤にとって、時間の経過とともに変化し、多様化する被災者のニーズに対応することは、必ずしも容易なことではありませんでした。

 今回の会議の目的は、この7年間の経験から日赤が得た教訓、課題等を支援してくださった各国赤十字・赤新月社と共有すること、また災害に対する社会のレジリエンス(回復力)の強化に関して協議をすること、そして日赤からのメッセージを発信することでした。

 日赤が実施する復興支援事業は、計画されたうち約9割以上の事業が完了していますが、今なお仮設住宅での生活を余儀なくされている被災者、なかでも高齢者を対象に、こころのケア、健康支援を行うほか、防災教育などの活動を継続しています。

会議



会議で質疑応答する参加者

会議で質疑応答する参加者

 2月26日から3日間の日程で開催された会議には、海外の赤十字・赤新月社からの参加者48名を含む、約100名が参加。初日に東京で開催された会議と、翌27日から28日にかけて岩手県、宮城県、福島県を訪問した現地視察で構成されました。

 会議では、日赤の復興支援事業の成果、教訓、課題をはじめ、第三者評価及び提言に対する日赤の取組み、今後起こりうる大規模災害への日赤の備えについて日赤が報告し、参加者からの質疑応答では、活発な意見交換がなされました。

これまでの日赤の取り組みについては、こちらをご覧ください。
「東日本大震災 復興支援レポート」[PDF]


わかりやすいプロジェクト
国会事故調査委員会学生チーム

わかりやすいプロジェクト国会事故調査委員会学生チーム

 招待講演「7 years later」では、政策研究大学院大学名誉教授であり、国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(NAIIC)委員長を務めた黒川清氏により、東日本大震災がもたらし、今なお続く諸課題が提示されました。
 また、わかりやすいプロジェクト国会事故調査委員会学生チームは、「今、ふたたび原発事故を振り返る -The NAIIC revisited-」と題して、福島県の高校生の目から見た事故の考察を通じて、事故に至る根本原因が我々の身近なところに潜んでいるとの見解を発表しました。

日赤からのメッセージ


 会議の議論を通じて、日赤がまとめ、発信したメッセージは以下の6つのポイントです。
全文については、こちら [PDF] をご覧ください。

  • 世界各地で近年増加する大規模災害への備えとしては、応急対応だけでなく復興支援までを含めた「災害マネジメントサイクル」の全体を通して支援を進めていくことが極めて重要であること。
  • このうち復興支援では、受益者の主体的な取り組みを軸にした、行政やボランティアをはじめとするさまざまな関係者との連携が必要であり、役割分担や活動を整理しておくこと。
  • 各国赤十字・赤新月社は、復興期に増大する多様なニーズに対応するために、組織の柔軟性や支援を受けるためのメカニズムを備える必要があること。
  • 赤十字による復興支援活動の事例・経験を蓄積・共有すること。
  • 日本赤十字社は、東日本大震災復興支援事業を通じて得た教訓をふまえ、国際赤十字との連帯のもとで、復興支援活動の具体的な国際基準の策定に貢献する用意があること。
  • 復興支援はレジリエンス強化につながるものであること。

現地視察


 岩手県庁、女川町地域医療センター、大川小学校旧校舎、等を視察した一行は、福島県へ移動。常磐自動車道から国道6号線を南下する移動のバスの車窓からは、避難指示が解除されてからも人影のまばらな浪江町や大熊町をはじめとする帰還困難地域、福島第一原子力発電所周辺や路上に設置された空間線量計なども視察することが出来ました。バスの中には福島県支部職員が同乗し、参加者からの福島第一原子力発電所事故にかかわる除染の状況や帰還した住民が直面している課題などに対する質問に答えました。


葛尾村復興公営住宅のにこにこ健康教室

葛尾村復興公営住宅のにこにこ健康教室

 会議参加者は、三春町にある葛尾村の災害公営住宅にある集会所で行われた福島県支部主催の「にこにこ健康教室」を視察。この住宅に暮らす方々と交流する時間を持つことが出来ました。健康維持だけでなく、近隣住民とのコミュニケーションをもつことも目的としているこの事業は、現在も継続して行っている活動です。
 ホットタオルを使ったリラクゼーション活動を体験した会議参加者からは、「震災後7年が経過しても、日赤がコミュニティを軸に活動を継続しているのが素晴らしい。避難を余儀なくされている住民の健康維持はもとよりコミュニティの再構築や心理社会的サポートに役立っている」とのコメントがありました。この体験は、参加者にとって、日赤の復興支援事業の一つである「にこにこ健康教室」の活動を実感する機会になりました。


コミュタン福島で
放射線計測の説明を受ける参加者

コミュタン福島で放射線計測の説明を受ける参加者

 またその後、福島県環境創造センター(愛称:コミュタン福島)を訪問した一行は、福島第一原子力発電所事故の概要や現在の福島の環境、放射線の基礎的知識等について展示をみたり、職員から説明を受けたりして、知識や理解を深めました。

 3日間の会議と視察を終えた参加者は最後に郡山市内のホテルに集まり、日赤が会議で発したメッセージと自分たちの視察内容について総括を行いました。参加者はグループに分かれて、日赤の7年間に及ぶ災害対応・復興支援から赤十字全体に反映されるべき教訓についてまとめました。そのうちいくつかを紹介します。

  • 過去の災害から学び、記録として残すことの重要性を日赤の活動から強く感じた。一方で、福島の原子力発電所事故のように想像を超えた初めて経験する災害が発生することもある。災害への備えには過去の教訓から学びながら、また想定外の災害に対しても準備しておく両面が必要。
  • 女川町の復興の現場では、市民が持続可能性と創造性に重点を置き、地域社会に新しい価値観を生み出していることに強く感銘を受けた。私たちの「より良い復興」(Build Back Better)には、災害だけでなく、突発事故とは関係のない社会問題となる他の脆弱性も含めたリスク軽減に注力することが必要である。
  • 復興支援においてはコミュニティのエンパワーメントが重要であり、日赤のコミュニティでの活動は評価できる。避難住民を対象に支援するのと同じように、コミュニティの特に若者を対象に訓練等を行い、災害に対する備えを進めることも重要。

 今回の会議は、日本赤十字社が取り組んできた7年間の活動を各赤十字・赤新月社に共有するとともに、災害復興支援について国際赤十字・赤新月社全体で検討していく端緒となりました。