平成29年度 第2回日本赤十字社
緊急被ばく医療アドバイザー会議について

2018/03/23

 日本赤十字社(以下、日赤)は、2017年12月18日~19日の日程で「平成29年度第2回緊急被ばく医療アドバイザー会議」を以下のとおり開催しました。

1. 緊急被ばく医療アドバイザー会議の背景


 日赤は、福島第一原発事故の教訓を踏まえ、2015年3月「原子力災害における救護活動ガイドライン 」(以下、ガイドライン)を策定しました。また、将来起こるかもしれない原子力災害に備えるため、全国の支部・施設に個人線量計等の放射線防護資機材を整備するとともに、救護班を対象とした原子力災害対応基礎研修会も開催しています。
 また、ガイドライン策定の経過で明らかになった課題の解決や、ガイドラインに記載された方策の具現化のために、緊急被ばく医療アドバイザー会議を定期的に開催しています。
 これまでの会議の開催内容については、こちらをご覧ください。

2. 平成29年度第2回緊急被ばく医療アドバイザー会議プログラム


 プログラムの詳細は、「平成29年度第2回緊急被ばく医療アドバイザー会議議事次第」[PDF] をご覧ください。

3. 会議の概要


1日目:2017年12月18日(月)13時~

 セッション1

セッション1

原子力災害情報センターにおける最近の取り組み
 標記について、赤十字原子力災害情報センター長 山澤より報告しました。
発表資料:原子力災害情報センターによる発表資料 [PDF]

【概 要】


緊急被ばく医療アドバイザー会議 会場の様子

緊急被ばく医療アドバイザー会議 会場の様子
  • 平成30年1月から、大津赤十字病院の職員を緊急被ばく医療アドバイザーに任命し、14施設、28名体制となった。原子力災害対応基礎研修会は来年度から原子力災害情報センターが運営する。
  • 内閣府の交付金は、事業に必要な整備をする為、病院から申請願いたい。それぞれの被災者対応強化につながるよう県と調整されてはどうだろうか。
  • 交付金を研修費に充当できるのであれば、基礎研修会の強化にもつながることから、本社では内閣府と調整中である。県担当者へ病院から調整依頼するように話が進展する場合もあるのでよろしくお願いしたい。
  • 宮城県原子力防災訓練では石巻赤十字病院の市川先生が全体の訓練をコントロールされ、同病院の仁杉先生が細かなところまで指導されていた。また、原子力事業者から放射線管理要員が実際に訓練に参加されていて、技術的な指導もあり、実践的であった。

 セッション2

セッション2

日赤原子力災害拠点病院での取り組み


福島赤十字病院 海藤診療放射線技師

福島赤十字病院 海藤診療放射線技師

 セッション2では、下記二つの原子力災害拠点病院から、地域での原子力災害医療に関する取り組みや原子力災害拠点病院としての役割について報告いただきました。

福島赤十字病院
診療放射線技師 海藤 隆紀
発表資料:「福島赤十字病院における原子力災害拠点病院としての取り組み」[PDF]

【概 要】

  • 福島赤十字病院の研修体制や整備情報等、福島県での原子力災害医療体制の状況
  • ホールボディカウンタの説明と検査件数の推移
  • 福島県での原子力防災訓練実施例

【協議内容】

  • 福島県の訓練は、福島第一原発事故とほぼ同じ想定。警戒区域から避難してきた人の救護を想定している。避難者の中には汚染している人も含まれていることから、途中の中継ポイントでスクリーニングを行わなかった人は、救護所でスクリーニングをしてトリアージを行った。
  • 救護所にスクリーニング済証明書を持っていない人が避難してきた場合混乱が予想されるので、その状況を想定して行った。重症だと拠点病院に搬送されスクリーニングもされるが、軽症だと搬送もされず、証明書を持っていないことも実際には多いと思われる。

長浜赤十字病院
救急科部長兼医療社会事業部長 中村 誠昌
発表資料:「原発立地・隣接道府県の原子力防災 計画内での赤十字の取り扱われ方」[PDF]

【概 要】

  • 原子力発電所の立地及び隣接道府県の原子力災害対応計画を調査。各県における日赤の求められる役割を実際の防災計画等を基に考察した。
  • 防災計画は、県の計画をそのまま市町村がなぞらえる傾向にある。日赤は指定公共機関だが、県と協定締結しないと、市町村とも協定締結できず、防災計画において日赤の立場が明確ではなくなる。防災計画において日赤の役割をどの様に明記するかまだ明確な答えは出ておらず、ご意見を頂きたい。

【協議内容】

  • 役割は大まかに示し、細かい点については県によって立場が違うので、適宜変えていくのが良い。日赤のスタンスを知ってもらう為には、愛媛や滋賀など先行している県がリードし、実例として挙げていけば、国や県も動きやすいのではないか。
  • 滋賀県では原子力災害時の病院避難では日赤の協力を期待されている。他の赤十字病院への応援依頼となれば支部経由になると思われるので、支部の役割を整理する意味でも、県の防災計画の中で日赤が期待される内容を整理したい。
  • それぞれの支部で協定の見直しや防災計画の中での役割を整理する取り組みは重要。県の防災計画の原子力災害対応の中に日赤の役割が明記されれば、災害対策本部への緊急被ばく医療アドバイザーの派遣等にも対応できる。滋賀県の行政との取り組みが各県の良い事例となりうるので引き続き県との調整を願いたい。

 セッション3

セッション3

赤十字施設の施設避難等
 これまでも緊急被ばく医療アドバイザー会議等で協議してきた赤十字施設の施設避難等について、これまでの議論を振り返りながら継続的に協議を行いました。

個別協議①:被災地赤十字施設への支援スタッフ派遣
赤十字原子力災害情報センター長 山澤 將人

個別協議①:被災地赤十字施設への支援スタッフ派遣
赤十字原子力災害情報センター長 山澤 將人

【概 要】

  • 安全基準/活動区域についてはガイドラインに定める一般の活動従事者の範疇で検討する。活動区域については、これから避難するかもしれない病院での活動になるので、避難指示が出る可能性のある区域での活動となり、一般の活動従事者とは区別する必要あり。
  • 教育研修については支援チームの要員についてしっかりとしたものが必要だが、原子力災害拠点/協力機関となるような施設は、原子力安全研究協会等からの研修機会も得られるのでそういったものの活用も検討する。
  • 松江/松山からも施設長の内諾が取れ、現在9施設からの内諾が得られている。さらに個別に働きかけてほぼすべての施設からの内諾を得たいと考えている。
  • ガイドラインで定めるところの「警戒区域等」とは、避難勧告・避難指示・安全に活動できないところなどを含めた広義の区域であって、法律上の警戒区域とは異なる。基礎研修会等で比較的高い空間線量での活動を議論するのは、こういった地域で活動するという意味ではなく、しっかりと対応すればそれでも1mSv以下に抑えられるというのを確認するため。

【協議内容】

  • OIL2程度ということは、OIL1までかなり幅があるのでしっかりとした線引きが必要。また研修体制は各施設で個別に研修・育成というような形は無理があるのでしっかり考えてほしい。
  • OIL2以上では実際に入れ込むのは難しいと考え、発災後OIL2になる前に迅速にチームを入れ込んで、そのチームがOIL2となった場合に病院避難を支援する形を考えている。教育については基礎研修会とは異なった内容になると思うが、外部への委託等も含めて検討する。
  • 被災地病院への支援スタッフの派遣について、舞鶴では幹部会で2回ほど協議した結果全面的に協力するという結論になっている。病院の人員等厳しい部分もあるが、要請があったときにできる限りの協力をしたい。
  • 支援チームには事務職・薬剤師等、放射線業務従事者以外も含まれているので、特別な資格は想定していない一般の職員で対応できる想定。ただし、教育については支援チームに必要なスキルについてしっかりと行うことが必要と考える。人員の選定については性別や年齢などの配慮も必要なところだが、本人・グループのコンセンサスも必要。
  • 原子力災害発生後OIL2になる前に迅速に入れ込むということであれば、発電所の状況も不安定な状況での判断が必要になる。派遣後に状況が悪化する可能性がある中で、一方で被ばく線量を1mSvで抑えられるかについては確かではない。1mSvを前提とするが状況によっては超えることもあるという事であれば、想定として明記していたほうがいい。

個別協議②:赤十字施設における被災地からの入院患者受け入れについて
赤十字原子力災害情報センター 嘱託 藤巻 三洋

個別協議②:赤十字施設における被災地からの入院患者受け入れについて
赤十字原子力災害情報センター 嘱託 藤巻 三洋

【概 要】

  • 前回の緊急被ばく医療アドバイザー会議でいただいた意見を反映させて、マニュアル案を作成した。大きく変わったのは避難退域時検査を受けた患者を前提とする点、避難退域検査である程度の汚染が認められた患者に対する配慮を明記した。
  • マニュアルはそれぞれの施設で研修時に使いやすいように、スライドにノートを付けた基礎研修会資料と同じような様式とした。ノートの部分は新たに作成したので確認いただきたい。前回協議した時から内容が変わっているところはハイライトしてあるので、併せて確認願いたい。
  • 事務局案はまだまだ見直しの余地があるものと認識している。実際に施設の目線で見て使いやすいように、このマニュアルを基に施設職員にブリーフィングすることなども想定して様々なご意見をいただき、完成度の高いものとしたい。

【協議内容】

  • 住民の避難を自家用車で想定している自治体は、自治体の想定した避難ルートを通らないケースも想定され、2~4割はスクリーニングを通らないで避難すると考えられている。また、ある程度の汚染のあった人に対しては、自治体の考え方としては避難先で可能な限り追加的除染を実施して、他の避難者と同等のレベルまで下げるという考え方なので、患者受け入れにおいてもご配慮されたい。
  • スクリーニングを通過しない患者については前回までは想定に入れて協議したが、すべての施設での安全・安心を考慮して、スクリーニング通過を前提とした。その前提を外れた場合にはどのように対応できるか、マニュアルにどのように表記できるか検討したい。

2日目:2017年12月19日(火)9時~

 セッション4

セッション4

原子力災害対応基礎研修の研修内容について
 原子力災害対応基礎研修会で使用している講義資料について、原子力災害対策指針の改正の反映や引用データの更新等を検討するため、各講義の資料について担当アドバイザーを中心に協議を行いました。平成30年度に向けて「原子力災害における救護活動マニュアル」の改訂と共に進める予定です。また、原子力災害対応基礎研修会の新しい講義として、原子力災害時における被災者とのコミュニケーションのグループワークについて、日赤こころのケア指導員の協力を得て、内容の検討を行いました。

 セッション5

セッション5

原子力災害における救護活動マニュアル改訂等について

【概 要】

  • 原子力災害対応基礎研修会資料の改訂に合わせて、語句の変更や名称の見直しを検討したい。その他の文書とも名称等については統一していきたい。
  • 「緊急被ばく医療アドバイザー」の名称は残しながら、「緊急被ばく医療」を「原子力災害医療」に変更したい。
  • 出典の古くなった添付資料等は削除し、現行の基礎研修会資料で説明する形にする。
  • 日赤の原子力災害医療指定施設は八戸および鳥取赤十字病院を加えて、名称を「原子力災害拠点病院」および「原子力災害医療協力機関」に統一して表記する。広島・長崎については「原子力放射能障害対策研究所」とする。

【協議内容】

  • 拠点病院は指定だが協力機関は登録であるので、指定・登録と語句を分けたほうがいい。原子力災害医療アドバイザーについては、他機関との混同を避けるため「日赤」と明記すること。
  • マニュアルの改訂については、関連する例規等を改正する必要があるためある程度の時間をかけながら行う。緊急被ばく医療アドバイザーについては、特に問題なければ原子力災害医療アドバイザーに名称を変更することとする。

 セッション6

セッション6

各施設での取り組み例紹介

唐津赤十字病院
医療社会事業部長 兼 医療技術部長 兼 第二外科副部長 酒井 正
放射線技術課 技術第一係長 坂井 征一郎

【概 要】

  • 9月に行われた防災訓練の模様が20分にまとめて放映され、線量測定に関しては、ビデオを見ながら説明がなされた。
  • この訓練は、放射能漏れはない状況で、作業員の1人が怪我し、汚染し、その為の除染作業を行う想定で、除染後は入院処置を行い、適切に対応する流れとなっている。
  • 通常、この訓練は、アドバイザーが指示をしながら行うのだが、今回は、現場任せで行い、何とか形になった。