平成29年度 第1回日本赤十字社
緊急被ばく医療アドバイザー会議について

2017/09/28

 日本赤十字社(以下、日赤)は、2017年7月6日~7日の日程で「平成29年度第1回日本赤十字社緊急被ばく医療アドバイザー会議」を以下のとおり開催しました。

1. 緊急被ばく医療アドバイザー会議の背景


 日赤は、福島第一原発事故の教訓を踏まえ、2015年3月「原子力災害における救護活動ガイドライン」(以下、ガイドライン)を策定しました。また、将来起こるかもしれない原子力災害に備えるため、全国の支部・施設に個人線量計等の放射線防護資機材を整備するとともに、救護班を対象とした原子力災害対応基礎研修会も開催しています。
 また、ガイドライン策定の経過で明らかになった課題の解決や、ガイドラインに記載された方策の具現化のために、日赤の緊急被ばく医療指定機関等から委嘱されたアドバイザーが集まって、定期的に「緊急被ばく医療アドバイザー会議」を開催しています。
 これまでの会議の開催内容については、こちらをご覧ください。

2. 平成29年度第1回緊急被ばく医療アドバイザー会議プログラム


 プログラムの詳細は、「平成29年度第1回緊急被ばく医療アドバイザー会議議事次第」[PDF] をご覧ください。

3. 会議の概要


1日目:2017年7月6日(木)13時~

 セッション1(情報共有)

セッション1(情報共有)

原子力災害情報センターにおける最近の取り組み
 標記について、赤十字原子力災害情報センター長 山澤より報告しました。
発表資料:原子力災害情報センターによる発表資料 [PDF]

【概 要】


緊急被ばく医療アドバイザー会議 会場の様子

緊急被ばく医療アドバイザー会議 会場の様子
  • 2017年度の人事異動等による体制変更について説明。日赤緊急被ばく医療機関に鳥取赤十字病院が2017年度から加わり、緊急被ばく医療アドバイザーは13施設26名体制となる。
  • 「平成28年度第2回原子力災害対策検討委員会」での協議内容について共有。(1)被災地赤十字施設への支援スタッフ派遣と、(2)被災地施設からの患者受け入れについては、委員会で合意された基本方針に基づいて、院長会議等で共有し合意形成を図る。
  • 開設から3年が経過した原子力災害情報センター(NDRC)について活動評価報告書を作成した。NDRCでの実施案件を14の活動に整理したうえで評価を行ったが、特に ②原子力災害時に活動従事者が活動するための環境の整備と、③ガイドライン策定時に継続課題とされた課題への取り組み においては、緊急被ばく医療アドバイザー体制の構築と、内部人材を活用した各種の取り組みが高く評価された。
  • NDRCの今後の事業計画として、先の活動評価における提言等を反映させてマスタープラン、全体計画を作成した。特にNDRCの活動が2020年度で終了する東日本復興支援事業の一部であることから、「事業継続に向けた取り組み」を4つの柱のうちの一つと位置付けた。
  • かねてから打診のあった韓国赤十字社のスタディツアーについて、石巻赤十字病院での原子力災害対応基礎研修会の機会をとらえて受け入れを行った。

 セッション2

セッション2

日赤原子力災害拠点病院での取り組み
 国の新しい原子力災害対策指針のもと、日赤の緊急被ばく医療指定機関等からは7つの施設が原子力災害拠点病院として指定される予定です。セッション2では下記二つの原子力災害拠点病院から、地域での原子力災害医療や拠点病院としての役割について報告いただきました。

福井赤十字病院
麻酔科部長 兼集中治療室長 田邉 毅、放射線科部 X線技術課長 西郡 克寛
発表資料:「原子力災害拠点病院での取り組み」[PDF]

【概 要】

  • 福井赤十字病院では、院内で2年前に災害検討部会を立ち上げた。その中で原子力災害拠点病院としての対応が必要になるため、ワーキンググループを立ち上げ講義や訓練を実施している。今後緊急被ばく医療スタッフ向け研修体制をさらに整備していく。
  • 災害拠点病院要件達成のための機材と設備について整理を行い、汚染患者の動線や除染スペースの確保、内部・外部被ばく線量評価のための放射線測定器等を整備している。
  • 福井県原子力災害時医療連携推進協議会や原子力防災訓練にも参加している。今年中に県内の原子力災害拠点病院間の意見交換等も行う予定。

【意見交換】

  • BCP(業務継続計画)はワーキンググループができたばかりで、細かいところまでは決まっていない。管財課を通して卸業者との連携をとる予定。業者とは災害時日赤への医療資源提供に関して協力が得られるように、関係を構築していく。
  • 原子力災害拠点病院の要件の一つである原子力災害派遣チームについては、福井県からはチーム数に関する要請はない。派遣チームの構成は医師1名、看護師1名、放射線技師1名の最低3名だが、災害の規模によっては編成人数を増やすことも検討する。今後も研修・登録を進めて、そのメンバーの中で協力してチームとして機能させる計画。

長浜赤十字病院
放射線科部 技師長 松井 久男、救急科部長 兼 医療社会事業部長 中村 誠昌
発表資料:「滋賀県における原子力災害への取り組み-人材育成について-」[PDF]
     「滋賀県原子力災害医療体制整備と長浜赤十字病院の現況報告」[PDF]

【概 要】


長浜赤十字病院 松井技師長

長浜赤十字病院 松井技師長
  • 滋賀県原子力災害医療体制整備事業の一環として、住民避難時の迅速なスクリーニングを可能にする人材育成事業を、滋賀県放射線技師会で受託した。2015年~2016年に合計6回の研修会が実施され、スクリーニングの実施に必要な放射線に係る専門知識と技術を習得した人材の育成が行われた。
  • 滋賀県の原子力災害医療体制では、長浜赤十字病院・大津赤十字病院が原子力災害拠点病院に指定されており、大きな役割を担っている。特に長浜赤十字病院は基幹原子力災害拠点病院として、滋賀県の原子力災害医療体制整備に積極的に協力している。
  • 原子力災害拠点病院として、原子力災害医療に必要なさらなる研修体制の充実と、甲状腺被ばく評価の体制作りを検討している。

【意見交換】

  • 滋賀県の地域防災計画の<原子力災害対策編>では、指定公共機関として日本赤十字社滋賀県支部の役割が明記されており、(1)医療救護 (2)救援物資の備蓄および配分 (3)災害時の血液製剤の供給 (4)義援金の受付および配分 (5)その他災害救護に必要な業務となっている。

 セッション3

セッション3

「原子力災害時の被災者とのコミュニケーション」グループワーク化について
 先般NDRCで作成した「原子力災害時における被災者とのコミュニケーション」の内容を、原子力災害対応基礎研修会でどのように伝えるかを協議しました。グループワークとして<コミュニケーション7つの要素>を強調して伝えた上で、<救護活動で想定されるコミュニケーション>の3つの例を体験してもらい、理解に繋げること、研修会を実施する各地域のこころのケア指導者ならびに指導者候補、臨床心理士の先生方からの協力も念頭に検討する等の意見が出されました。

 セッション4

セッション4

赤十字施設の施設避難等
 これまでも緊急被ばく医療アドバイザー会議、原子力災害対策検討委員会で協議してきた赤十字施設の施設避難について、これまでの議論を振り返りながら継続的に協議を行いました。

個別協議①:赤十字施設における被災地からの入院患者受け入れについて
赤十字原子力災害情報センター 嘱託 藤巻 三洋

個別協議①:赤十字施設における被災地からの入院患者受け入れについて
赤十字原子力災害情報センター 嘱託 藤巻 三洋

【概 要】

  • これまでの緊急被ばく医療アドバイザー会議・原子力災害対策検討委員会での協議内容を整理。当課題への取り組みの前提として、原子力災害発生時に広域避難計画に基づいて実施される病院避難において、行政の対応を補完するものとして全国の赤十字病院において患者受け入れを準備することとする。その第一歩として、統一した原子力災害時の患者受け入れマニュアルを作成する。
  • ‘原子力災害時の患者受け入れマニュアル構成’(案)の提示。‘患者施設立地/避難行動別に必要な配慮’では、避難退域時検査を通過しなかった患者を想定することとした。
  • 広域避難計画の概要、スタッフ事前教育に必要な参考資料を例示した。

【協議内容】

  • 実際には例外はあるとしても、OIL(運用上の介入レベル)によって入院患者が避難する場合、スクリーニングを通過することを大前提としてとらえること。スクリーニング通過の証明書がある患者の対応を前提とし、例外の場合の対処方法を例示しておくことが重要。
  • 自施設に検査能力がない病院にスクリーニングを受けていない患者が来た場合、追加的検査を外部リソースを用いて実施する、もしくは検査能力のある病院へ転送するという選択肢を検討すること。受け入れの調整時に施設の能力に合わせて、スクリーニングの有無を確認する。
  • 滋賀県では、検査結果が40,000cpm以下であるけれども汚染の認められた被災者については、衣服等の着脱やその衣服の管理について指導することにしている。スクリーニングの証明書は通過したことを証明するのみで汚染の程度はわからない。そういった患者の扱い、追加的検査の有無、交換した衣服の管理等を検討すること。

個別協議②:被災地赤十字施設への支援スタッフ派遣
赤十字原子力災害情報センター長 山澤 將人

個別協議②:被災地赤十字施設への支援スタッフ派遣
赤十字原子力災害情報センター長 山澤 將人

【概 要】

  • 被災地赤十字施設への支援スタッフ派遣については、緊急被ばく医療指定機関等から優先的に行うことを想定しており、まずは各施設長の了承をお願いしているところ。
  • これまでの緊急被ばく医療アドバイザー会議・原子力災害対策検討委員会での協議内容を整理。標記課題については、①当面はガイドラインの活動従事者の線量限度(1mSv/活動期間)を基本とする ②緊急被ばく医療指定機関等から優先的に研修を受けたスタッフ(チーム)を確保 ③支援スタッフ活動マニュアル・研修体制の整備が必要等と協議されてきた。

【協議内容】

  • これまで施設長の了解が得られた施設についても、活動体制や個人の被ばく線量等までの細かい協議はしていない。ガイドラインで救護班の活動体制を定義している中で、病院支援のスタッフも一般の活動従事者として整理して、ガイドラインの範囲内で活動する旨を了承してもらっている。
  • しっかりとした研修や登録制度を作ったうえで自己完結型の機能を持たせた、チーム派遣を基本とした体制への意向が強い。緊急被ばく医療施設間の協定という形も含めて検討を進め、併せて施設長の理解を得ていく。支援チームの活動体制や研修体制等についても協議を継続する。

2日目:2017年7月7日(金)9時~

 セッション5

セッション5

原子力災害対応基礎研修の研修内容について
 2014年から実施している原子力災害対応基礎研修会の使用する教材の内容については、各種法令や日赤の原子力災害対応の実際を反映させながら、2016年3月に「原子力災害における救護活動マニュアル」の修正に合わせて、マニュアルの付属資料として整理されました。このセッションでは、国の原子力災害対策指針の改定や日赤の原子力災害対策に対する取り組みの進捗等を受けて、研修会の構成・講義内容・資料等に関する変更について協議しました。

 セッション6

セッション6

各施設での取り組み例紹介
 1日目のセッション2に続いて、下記施設から日赤の緊急被ばく医療指定機関の取り組み例の紹介を行いました。

松江赤十字病院
放射線科部 部長 森岡 伸夫、放射線科部 技師長 磯田 康範
発表資料:「屋内退避に向けた取り組み-施設設備と避難計画-」[PDF]

【概 要】

  • 原子力災害に備えた島根県広域避難計画では、PAZ(原子力施設から概ね半径5km圏内)、UPZ(原子力施設から概ね半径30km圏内)に所在する各市町村について避難先が指定されており、避難経由所を経由した避難ルートが計画されている。広域防災計画においては、松江赤十字病院は原子力発電所から10km圏内の原子力災害医療協力機関として、島根県支部は指定公共機関として役割が明記されている。
  • 島根原子力発電所から10km圏内に位置する松江赤十字病院では、同発電所において原子力災害が発生した場合には、屋内退避/避難を念頭に対策準備を進めている。屋内退避時の放射性物質の侵入を防ぐための院内陽圧化、外気取り込みのフィルター設置等を行った。あわせて病院職員の役割と避難行動の流れを明記した「原子力災害に係る避難計画」を作成した。
  • 原子力災害時に登院可能な職員の把握は、調査方法も含めて検討中。家族構成等により避難を優先する職員も想定され、登院できる職員で実行できる避難計画が必要。

松山赤十字病院
第一内科部長 藤﨑 智明、診療放射線技師 高本 研二
発表資料:松山赤十字病院による発表資料 [PDF]

【概 要】

  • 松山赤十字病院では2004年より緊急被ばく対応マニュアルを整備し、今年改定を行ったところ。マニュアル改定に際して、2006年に配備されたNBC除染テントの状態の確認、緊急被ばく医療人材の職種構成の確認等を行った。
  • 緊急被ばく医療についての研修は、病院の「救護員院内認定プログラム」に基づいて実施している。特殊救護班として育成してきた被ばく医療人材は、2017年より原子力災害拠点病院の原子力災害派遣チームとして研修を修了した。