原子力災害を含む複合災害に備える
~佐賀県・玄海原発の重大事故を想定した防災訓練実施~

2016/11/14

 大地震、大津波、原子力発電所(以下、原発)での事故が重なり未曾有の大災害となった東日本大震災。複合災害と呼ばれるこの災害発生以降、住民の自主防災の意識が高まり、より実践的な住民参加型の防災訓練が全国で展開されています。


避難住民の受付と汚染検査

避難住民の受付と汚染検査

 2016年10月10日、佐賀県において、福岡県・長崎県と連携した大規模な原子力防災訓練が実施されました。原子力災害下では、屋内退避などを含む大規模な住民避難が想定されます。佐賀県、玄海町、唐津市、伊万里市の防災計画などに基づき実施されたこの訓練では、原子力災害時の二次被ばく医療訓練、避難退域時検査訓練、地域住民や社会福祉施設、学校などの一般住民が参加する屋内退避や避難訓練などが行われました。


自衛隊による汚染した車の除染

自衛隊による汚染した車の除染

 避難退域時検査訓練では、避難指示を受けて一時避難してきた住民や、避難に使用した車両のスクリーニングが行われ、汚染があった場合は除染をするという流れが確認されました。


避難所運営について学ぶ

避難所運営について学ぶ

玄海町の避難所には、簡易の授乳室、要介助者対応室、地域保健師が控えた健康相談所が設置されるなど、災害時の避難所の初期ニーズへの対応策が取られており、避難にあたっては、マスクや軍手の着用など防護への配慮もなされていました。避難所に集まった参加者は、防災士とともに避難所運営ゲームを行い、実際の避難所生活を想定しながら避難所の運営方法を学んでいました。

二次被ばく医療訓練 ~唐津赤十字病院の役割と課題~



病棟敷地内の緊急医療施設

放射能汚染拡大を防ぐ養生

汚染した負傷者の除染処置

病棟敷地内の緊急医療施設

 今年8月に新病院を開院した唐津赤十字病院は、玄海原発から30 Km以内であるUPZ (Urgent Protective action planning Zone:緊急時防護措置を準備する区域の略。原子力災害時に予防的な防護措置を講じたり、段階的に屋内退避、避難等行うエリアで、原発から半径30 Km以内) 圏内に位置し、佐賀県の二次被ばく医療機関に指定されています。敷地内には、被ばく汚染検査のための救急医療施設が設置されており、医師2名、看護師3名、放射線技師2名、事務管理要員2名の9名で編成された被ばく医療を行うための専門チームが2チーム常備されています。


放射能汚染拡大を防ぐ養生

 今回の二次被ばく医療訓練は、玄海原発で発生した汚染を伴う負傷者の二次被ばく医療機関での汚染(除染)処置と、高度被ばく医療支援センターである長崎大学への転送というシナリオに基づき、長崎大学病院との連携で実施されました。


汚染した負傷者の除染処置

 地震発生後、玄海原発で汚染した負傷者が発生。負傷者受入れの要請を受けた病院は、待機していた専門チームと職員が協力し、搬送動線、処置室、資機材の養生を行いました。その後、専門チームは防護服を着用し、負傷者情報の確認等を行い受入れ態勢を整えました。消防によって搬送されてきた負傷者に対する除染及び応急処置を実施するも、汚染箇所の被ばく数値が下がらないことから、高度被ばく医療支援センターへの転送を判断。佐賀県を通じて搬送手段確保し、患者を転送しました。
 転送後、汚染された施設内の養生を撤収し、チーム要員と施設の汚染検査を行って訓練を終了しました。

 実際の医療施設を使用して搬送担架やチームの動線を確認したことで、災害時に多数の汚染した傷病者が搬送された場合には、傷病者の状況の見極めがより重要になることなども見えてきました。今後は、UPZ圏内に位置する病院として、原子力災害時の避難計画を含めた防災計画全体の見直しに取りかかる予定です。

緊急被ばく医療指定機関等としての赤十字病院


 2016年10月現在、赤十字病院では、唐津赤十字病院を含む11の緊急被ばく医療指定機関と、3つの関連医療機関が原子力災害に備えています
 2015年8月、大規模な自然災害などとの複合災害時において、被ばくのおそれのある傷病者への診療や関係機関との連携を強化するため、当該指針が改正されました。新指針では、要件を満たした医療機関を原子力災害拠点病院として指定することとしており、今後、上記を含む赤十字病院からも原子力災害拠点病院が指定される見込みです。

原子力災害時の日本赤十字社の対応と備え


 日本赤十字社は、原子力災害に備えるために、「活動従事者の安全確保」、「原子力災害対応のための体制の強化」、「原子力災害対応のための人材育成」「原子力災害に関する情報収集と発信」の4つの柱に取り組んでいます。
 これらを実現するために、「救護活動マニュアル」や「救護活動ガイドライン」の作成、デジタルアーカイブを通した情報発信、原子力災害時に救護活動を行う救護班のための原子力災害対応基礎研修会を実施しています。また、救護班が放射線下で安全かつ適切に救護活動が行えるよう、上記の緊急被ばく医療指定機関などに緊急被ばく医療アドバイザーを任命しています。詳しくは、日本赤十字社の原子力災害に備える取り組みをご覧ください。