平成27年度 第1回日本赤十字社
緊急被ばく医療アドバイザー会議について

2015/08/21

 日本赤十字社(以下、日赤)は、2015年7月22日~23日の日程で、「平成27年度第1回日本赤十字社緊急被ばく医療アドバイザー会議」を開催しました。会議には、各赤十字医療施設において「緊急被ばく医療アドバイザー」等に委嘱されている医師や診療放射線技師が参加し、日赤の原子力災害における救護体制の構築について話し合われました。

1. 緊急被ばく医療アドバイザー会議開催の背景



緊急被ばく医療アドバイザー会議 会場の様子

緊急被ばく医療アドバイザー会議 会場の様子

 日赤は、福島第一原発事故の教訓を踏まえ、平成27年3月「原子力災害における救護活動ガイドライン」(以下、ガイドライン)を策定しました。また、将来起こるかもしれない原子力災害に備えるため、全国の支部・施設に個人線量計等の放射線防護資機材を整備するとともに、救護班を対象とした「原子力災害対応基礎研修会」も開催してきました。
 これらの取り組みに加え、原子力災害に適切に対応できる体制を構築するため、昨年8月26日に「緊急被ばく医療指定機関等担当者による意見交換会」を開催しました。本会議は、この意見交換会を発展させた会議と位置付けられており、また、原発立地県の被ばく医療指定機関や広島・長崎・福島の各赤十字病院の医師と診療放射線技師で構成される「緊急被ばく医療アドバイザー」による初めての会議となります。
 日赤の「緊急被ばく医療アドバイザー」は、本社や支部の災害対策本部で原子力災害時の “助言機能”を担います。具体的には、災害対策本部が活動の展開方針を決める際の助言や活動従事者の被ばく線量の管理などを行います。

※参考:「原子力災害における救護活動ガイドライン」の策定について
    「緊急被ばく医療指定機関等担当者による意見交換会」

2. 第1回緊急被ばく医療アドバイザー 会議プログラム


 プログラムの詳細は、「平成27年度第1回緊急被ばく医療アドバイザー会議プログラム」[PDF] をご覧ください。

3. 会議の概要


セッション1「原子力災害における救護活動ガイドラインについて」
 標記の件について、本社救護・福祉部 山澤災害対策企画室長より説明がありました。

【概要】

  • 福島第一原子力発電所事故の際の救護活動における経験と反省を踏まえて、原子力災害における救護活動ガイドラインを策定した。
  • 赤十字原子力災害情報センターでは、ガイドラインを受けた今後の取り組みとして、ガイドラインの周知・普及、教育研修、「原子力災害における救護活動ガイドライン研究会を踏まえた今後の検討課題」で示された課題への対応に取り組んでいる。
  • ガイドライン策定の際に有識者からなるガイドライン研究会から、将来のガイドライン改定に向けた検討課題として11の課題が提示された。この課題について、緊急被ばく医療アドバイザー会議を通じて課題の検討を行いたい。特に「被災地職員の安全管理」並びに「赤十字施設の施設避難等」に関して鋭意検討を行っていきたい。

※参考:「原子力災害における救護活動ガイドライン研究会を踏まえた今後の検討課題」[PDF]

セッション2「福島第一原発事故後の被災地職員の安全管理 - 福島での対応と現状 - 」
 標記の件について、福島赤十字病院 渡部院長より説明がありました。


福島赤十字病院 渡部院長による質疑応答

福島赤十字病院 渡部院長による質疑応答

【概要】

  • 東日本大震災以前は原子力発電所の安全性を信じていて、福島赤十字病院が原子力災害対応を行うことは想定していなかった。
  • 原発事故を受けて、福島赤十字病院では職員に対する情報発信を中心とした対応を行った。情報発信の内容として、福島市、病院周囲、院内各部署の空間線量率の測定と周知や、放射線に関する知識の普及、屋外での活動を最小限とするような生活指導等を行った。また、避難を希望する職員に対しては、いずれは復帰することを前提として対応を行った。
  • 福島赤十字病院では、万が一の場合に備えて屋内退避を検討した。屋内退避となった場合、物資の確保も含めて事前の対策が欠かせない。

セッション3「緊急被ばく医療の実際」
 標記の件について、独立行政法人放射線医学総合研究所 明石理事が講演されました。


放射線医学総合研究所 明石理事による講演

放射線医学総合研究所 明石理事による講演

【概要】

  • 福島での経験を踏まえて、被ばく医療体制の見直しが行われた。
  • 新しい原子力災害対策指針では、医療間の連携、役割分担を意識した新しい被ばく医療体制の整備が明記された。道府県単位では原子力災害拠点病院の指定と原子力災害医療協力機関の登録が求められている。指定にあたっては既に緊急被ばく医療指定機関に指定されている初期被ばく医療機関、二次被ばく医療機関の指定を参考とすることとされており、現在指定されている医療機関は今後の対応が期待されている。

セッション4「病院避難計画について」
 標記の件について、水戸赤十字病院 遠藤脳神経外科部長、福井赤十字病院 田邉第一麻酔科部長兼第一救急部長より、両病院の状況について説明がありました。

【概要】

  • 水戸赤十字病院
  • 立地する水戸市は人口が多く医療機関も多い。一方で周りには放射性物質を扱う施設が多数存在しており、原子力災害への対応が必要である。
  • 2014年12月に被ばく患者の受入訓練を行った。この訓練は福島のような大規模な避難を想定しておらず、小規模の受入を前提としたものである。
  • 茨城県の対策状況としては、病院避難の計画を県と医師会が作成中である。県の計画では県内での移動を伴う一時避難が前提となっている。受入定数に最大1.5倍の係数をかけた数値上限を設けて受入施設のマッチングを行ったのが現状。素案という位置付けで、病院同士の個別の確認は行えていない。更には、避難手段の確保や受入できない場合の再受入といったことについての具体化は未定である。また、日赤を含む規模の大きい病院については、自主的な対応も求められている。

福井赤十字病院 田邉医師による説明

福井赤十字病院 田邉医師による説明
  • 福井赤十字病院
  • 福井県では、原子力災害への対応計画は進んでおり状況を共有したい。
  • 福井県の計画の中では、福井赤十字病院に対して複数の施設からの避難受入が想定されている。受け入れ側としては情報収集や設備、資機材の確保、マンパワーの確保等、準備が必要であり、今後充実させたい。また患者だけでなく、職員やその家族に対するこころのケアの検討も必要と考えている。
  • 福井県の計画では県内での受入が前提となっているが、避難経路を踏まえると、周辺との連携を視野に入れて検討すべき課題ではないか。今後具体化すべき事項も多い。

セッション5「イタリア赤十字研修報告」
 標記の件について、水戸赤十字病院 遠藤脳神経外科部長より報告がありました。


水戸赤十字病院 遠藤医師による研修報告

水戸赤十字病院 遠藤医師による研修報告

【概要】

  • イタリア赤十字の呼びかけによって、各国赤十字社から災害コーディネーターの位置付けにあたる職員が参加。
  • ヨーロッパの歴史は戦争とともにあったため、赤十字に期待される役割は災害対応ではなく有事対応である。イタリア赤十字は軍との関係が深く、保有する施設、資機材の規模は大きくて充実している。
  • CBRN災害への計画性、専門性を持った備えを継続することの重要性が強調された。赤十字グループとして協力をしながら対処する重要性が確認された。

※参考:「イタリア赤十字社サマースクール(研修)への職員派遣について」

セッション6「原子力災害対応基礎研修会についての概要」
 平成27年度原子力災害対応基礎研修会の開催予定についての説明および意見交換が、以下のように行われました。


日本赤十字社医療センター
丸山医師による質疑応答

日本赤十字社医療センター 丸山医師による質疑応答

【概要】

  • 平成26年度同様、年2回開催(9月、11月)の予定。
  • 事務局提示のプログラム案について合意がなされた。
  • 各プログラムの講師が概定された。

※参考:「平成26年度第1回原子力災害対応基礎研修会」

セッション7「原子力災害対応における救護活動マニュアルの修正についての概要」
「原子力災害対応における救護活動マニュアル」についての意見交換が、以下のように行われました。

【概要】

  • 救護活動マニュアルに基礎研修会の資料を添付することについて、各講師からの合意を得た。
  • 来年度以降の基礎研修会実施に向けた資料の改定については、9月の基礎研修会終了後、再調整を行う。

※参考:「原子力災害対応における救護活動マニュアル」[PDF]

4. 第1回緊急被ばく医療アドバイザー会議 参加者一覧


 会議参加者は、「平成27年度第1回緊急被ばく医療アドバイザー会議参加者名簿」[PDF] をご覧ください。