日本赤十字社緊急被ばく医療指定機関等担当者による
意見交換会について

2014/12/02

1. 意見交換会開催の背景


 日本赤十字社は、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故に際して、原子力災害に対応した安全基準や必要な装備を用意していなかったため、一時的ではありましたが災害救護活動が十分に行えない期間が生じました。その教訓を踏まえ、今後、原子力災害に対応できる体制を整備するため、緊急被ばく医療指定機関等の関係者を集め意見交換会を開催しました。同指定機関である8つの赤十字病院、広島赤十字・原爆病院、長崎原爆病院及び福島赤十字病院の関係者が一堂に会するのは日本赤十字社でも初めての試みでした。プログラムは4つのセッションから成り、原発立地県の赤十字病院から現地の被ばく医療体制の報告、放射線医学総合研究所の明石理事の講演、緊急被ばく医療指定機関等の役割や協働体制、今後開催する原子力災害対応基礎研修会の内容の検討等が協議されました。ここでは、以下の通りその概要をご報告いたします。

2. 意見交換会の概要


(1)原発立地県等の被ばく医療体制について
 唐津、松山、長浜、福島の各赤十字病院からの報告後、以下のとおり質疑応答等がありました。

 
  • 救護班要員のように一定の知識・意思がある人材は良いとしても、病院内の一般職員に対する啓発はどうあるべきかとの質問があり、緊急被ばくに対する講習等を例えば病棟単位等で行うなどの方法により、一定程度の備えをしておくことが必要ではないかという意見がありました。
  • 各参加病院に、県内他施設や隣接県との連携について尋ねたところ、いずれの病院も、一定程度の連携、ネットワーク・顔のみえる関係づくりは進められているものの、かならずしも十分ではないことが確認されました。

(2)基調講演「あらたな緊急被ばく医療体制」の在り方について

 

 放射線医学総合研究所 明石真言理事からは、被ばく医療と災害医療の関係(災害の中の被ばく医療の位置づけ)、我が国の緊急被ばく医療の歩み、緊急被ばく医療の理念等についての講演をいただきました。特に福島第一原子力発電所事故での経験・教訓を踏まえ、今後の緊急被ばく医療体制がどうあるべきなのかということについて示唆に富んだお話をいただきました。
 
 まず、被ばく医療の理念に触れられ、医療である以上、汚染があってもなくても、被ばくがあってもなくても、けがをすれば、病気になればきちんと病院で診ていただく、これが被ばく医療の原点であり、被ばく医療の実践につながっていくということであります。
 次に、汚染の程度が自分たちにとって安全であるのかそうでないのかということが的確に判断できること、汚染を広げない、その病院に入院している患者さん、外来に来る患者さんに不安を与えないということが恐らく被ばく医療を展開していく上での鍵になるということです。これについては、放射線管理要員の役割の重要性について言及され、被災住民の搬送時、または、スクリーニング時に放射線管理要員が同行し、医師、看護師または被災住民に危険でないことを説明できるようにしておくことが、医療従事者や住民の安全・安心や、患者さんのスムーズな受け入れにつながるということを述べられました。


 

 また、今回のような原子力災害時は、高線量の建屋内で起きた場合の対応とは異なり、多くの住民の方が避難する状況に陥ること、リロケーション(移動)とかセトゥルメント(定住)を伴う長期の避難が起こることを認識して対応しなければいけないということ、そのような状況の中で、自治体によって被ばく医療に対する考え方が異なっていてはいけない、その地域全体で同じ考え方を持った被ばく医療体制を作らなければ実行的被ばく医療は行えないことも指摘されました。
 住民の一時立ち入りへの対応の必要性についても述べられました。一時立ち入りがスムーズに行われるためには、放射線に対する正しい統一的な知識を持つということと、医療者である以上第三者に正しい知識をわかりやすい言葉で伝えること、測定器等により、自分の活動する場所が安全かどうかの判断ができるということが重要になってくるということです。
 災害時の被ばく患者さんの円滑な受入れについては、病院全体の合意、つまり現場で働く一部の人たちだけでなく、医師、看護師、診療放射線技師、検査技師、事務方等病院スタッフ全体が日頃から教育・訓練を受け、放射線に対する正しい知識や対応を身に付けていることが、患者さんの円滑な受け入れにつながることを強調されました。


 

 病院機能の役割分担について、どこの病院でも一律の役割を持っているわけではなく病院によって特徴があること、その病院の特徴に合わせた無理のない被ばく医療体制を作っていくことが重要であり、また、原子力発電所までの病院の距離等地理的条件やその地域の人口数等も勘案し、その病院の機能に応じた役割分担を考えていく必要があることを指摘されました。

 最後に、いつ起こるとも知れない原子力災害事故のような不測の事態に備え、如何に被ばく医療に対するインセンティブを維持していくのかを個々の病院で工夫していかなければいけないこと、そして、入院・外来患者さんや地域の住民の方々に対して被ばく医療への理解を求めていく(不安を与えないような体制を作っていく)ことの必要性を述べられました。


(3)緊急被ばく医療アドバイザーの選任について
 本社から、災害医療コーディネーターは指揮命令機能、緊急被ばく医療アドバイザーは助言機能、という機能の明確化を期待していることが示されました。緊急被ばく医療アドバイザーは、必要に応じて専門施設等に助言を求める等、バックアップを得る可能性も活動の視野に入れています。また、その位置付けは、被災県支部の緊急被ばく医療アドバイザーを担うことを想定しており、広島赤十字・原爆病院と日本赤十字社長崎原爆病院は、本社の緊急被ばく医療アドバイザーを担う予定であるとされました。

3. 今後のスケジュール


 

 平成26年11月5日(水)、平成27年2月20日(金)に原子力災害対応基礎研修会の開催を予定しています。受講対象者は、各赤十字病院の医師、看護師、診療放射線技師、各県支部職員で、警戒区域外で活動する一般の救護班に対する基礎的な知識を付与し、救護班員自らの身を守ることを目的としています。また、こころのケア、リスクコミュニケーション等の検討、基礎的な放射線の知識の付与、防護資機材の使用についても研修に含める予定です。


4. 意見交換会のプログラム


【日時】
  平成26年8月26日(火)13:00~18:30から8月27日(水)09:00~11:30
【参加病院】
  二次被ばく医療機関(長浜赤十字病院、松山赤十字病院、唐津赤十字病院)
  初期被ばく医療機関(石巻赤十字病院、水戸赤十字病院、福井赤十字病院、
  舞鶴赤十字病院、松江赤十字病院)
  その他(福島赤十字病院、広島赤十字・原爆病院、日本赤十字社長崎原爆病院)
【開会挨拶】
  日本赤十字社事業局長 富田博樹
【意見交換会の趣旨説明】
  日本赤十字社事業局災害対策企画室長 山澤將人
【セッション1】
  各病院からの報告
  「主な原発立地県の被ばく医療体制について」
【セッション2】
  基調講演
  「あらたな緊急被ばく医療体制の在り方」
  独立行政法人放射線医学総合研究所 理事 明石真言
【セッション3】
  意見交換
  「緊急被ばく医療アドバイザーの役割と選出について」
  「緊急被ばく医療機関等に求められる役割について」
  「緊急被ばく医療機関等の連携による協力支援の在り方について」
【セッション4】
  原子力災害対応基礎研修会についての意見交換
【総括】